第十八話 村長の訪問 Scene1 突然の訪問者
昼過ぎ。
悠は家の前で、畑の様子を見ていた。
ノアは少し離れた場所で、地面を転がる小石を追いかけている。
いつもと変わらない午後だった。
そのとき。
「コン、コン」
玄関から音がした。
「……?」
悠は顔を上げる。
誰かが来た。
この家に来る人間は、最近ではリアくらいだ。
悠は少し警戒しながら玄関へ向かった。
扉の前で一度立ち止まる。
そして、ゆっくりと扉を開けた。
そこに立っていたのは、見覚えのない老人だった。
白髪で、穏やかな表情をしている。
服装も派手ではない。
ただ、その隣にリアが立っていた。
「……誰?」
悠が小さく尋ねる。
リアが老人を見て答えた。
「村長さん」
「……」
悠の動きが止まった。
村長。
つまり、村で一番偉い人らしい。
悠は少しだけ身構える。
何を言われるんだろう。
村に住めと言われるのだろうか。
何か問題を起こしたと思われたのだろうか。
いろいろ考えてしまう。
そんな悠を見て、老人はゆっくりと頭を下げた。
「突然訪ねてきてすまないね」
声は穏やかだった。
「わしはルミナ村の村長をしている者だ」
「……」
悠は黙っている。
村長はそんな悠を急かすことなく、少し笑った。
「森の中に人が住んでいると聞いてね」
「……」
「どんな人なのか、一度挨拶をしておこうと思って来たんだ」
悠は少し意外に思った。
それだけだった。
もっと何か言われると思っていた。
けれど、村長の目的は本当にそれだけらしい。
「……そう」
「うん」
村長は頷く。
「突然で驚かせてしまったかな」
「……少し」
悠が正直に答える。
リアが隣で小さく笑った。
村長も穏やかに笑う。
「それはすまなかったね」
悠は少しだけ肩の力を抜いた。
怖そうな人ではない。
けれど。
知らない人と話すのは、やっぱり緊張する。
悠は扉の前に立ったまま、村長を見る。
「……悠です」
「悠君か」
村長は頷いた。
「よろしくね」
「……よろしく」
短いやり取りだった。
それでも悠にとっては、十分に緊張する時間だった。
ノアがその様子を見て、足元へやってくる。
「きゅ?」
村長がノアを見る。
「おや」
悠は少しだけ身構えた。
けれど村長は、ただ穏やかに笑った。
「元気そうな子だね」
「……うん」
それだけだった。
悠は小さく息を吐いた。
どうやら。
思っていたより、怖い訪問ではなさそうだった。




