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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第十七話 パン屋の娘 Scene1 リアと村へ

翌日。


朝の畑仕事を終えた悠は、収穫した野菜をいくつか籠に入れていた。


リアも隣で薬草をまとめている。


「じゃあ、村に行こうか」


「……うん」


リアが薬草の入った籠を持つ。


悠も野菜の籠を持ち上げた。


「今日は何を持っていくの?」


「……これ」


「野菜?」


「……うん」


悠は籠の中を見る。


昨日、畑で採れた野菜だ。


「リアに渡そうと思って」


「私に?」


「……うん」


リアは少し驚いた顔をして、それから笑った。


「ありがとう」


「……別に」


悠は目を逸らす。


大した理由ではない。


昨日、一緒に畑仕事をした。


その畑で採れた野菜がある。


だから渡す。


それだけだった。


二人は並んで森を歩いた。


しばらくすると、木々の向こうに村が見えてくる。


ルミナ村。


前に一度だけ来た場所だ。


遠くからでも、人の声が聞こえてくる。


「……」


悠の足が少しだけ遅くなる。


前回は、村に入っただけで緊張していた。


人が多い。


声がする。


知らない人がいる。


それだけで、帰りたくなった。


今日も、胸の奥が少し落ち着かない。


「悠?」


リアが振り返る。


「……大丈夫」


「無理してない?」


「……してない」


そう答えたものの、声は少し小さかった。


村の入口をくぐる。


人がいる。


歩いている人。


荷物を運んでいる人。


店先で話している人。


子どもたちの声も聞こえる。


「……」


悠は籠を持つ手に少し力を入れた。


やっぱり、人が多い。


けれど――。


前回ほどではなかった。


「……」


隣にはリアがいる。


それだけで、少しだけ安心できる。


「このまま薬師さんのところに行くね」


「……うん」


「悠はどうする?」


「……一緒に行く」


「分かった」


リアが歩き出す。


悠もその隣を歩く。


知らない人とすれ違うたびに、少し緊張する。


誰かに見られると、つい視線を逸らしてしまう。


それでも。


前回のように、すぐ帰りたいとは思わなかった。


「……」


悠は小さく息を吐く。


村はまだ苦手だ。


人も多い。


静かでもない。


それでも今日は、リアが隣にいる。


それだけで――。


少しだけ、歩いていられた。

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