第十五話 森の小さな家
森の中を歩き、悠は家へ戻ってきた。
扉を開ける。
すると。
「きゅー!」
小さな影が駆けてきた。
「……ノア」
ノアは悠の足元をぐるぐる回っている。
どうやら帰ってきたことが嬉しいらしい。
悠は少しだけ笑った。
「ただいま」
「……」
言ってから。
悠は、自分で少し驚いた。
「……」
ただいま。
誰もいないのに。
そんな言葉を口にしていた。
ノアが首を傾げる。
「きゅ?」
「……なんでもない」
悠は誤魔化すように家の中へ入った。
手に持っていたものを机の上に置く。
今日、ミーナからもらったパン。
袋を開けると、まだ少しだけいい匂いがする。
「……」
悠はパンを眺めた。
村からもらったもの。
自分にとっては初めてのものだった。
そして。
ふと、リアの顔が浮かぶ。
「……」
しばらく考える。
「……明日、リアに何か返そう」
そう呟いた。
何を返すかは、まだ決まっていない。
でも。
もらったままというのも、なんとなく落ち着かなかった。
悠はパンをしまう。
ノアが隣から覗き込んでいる。
「きゅ?」
「……これは食べない」
「きゅ……」
少し残念そうな声。
「……お前の分は別にあるから」
「きゅ!」
途端に元気になった。
「……現金だな」
悠は小さく笑った。
森の小さな家に。
今日もいつもの夜がやってきた。
けれど。
少しだけ、いつもとは違う夜だった。




