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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene2 パン屋

Scene2 パン屋


 村へ入ることなく、悠とリアは森へ戻る道を歩いていた。


 悠は少しだけほっとしていた。


 やっぱり。


 森のほうが落ち着く。


 リアも特に何も言わず、悠の歩く速さに合わせてくれている。


 そのとき。


「リア!」


 後ろから声がした。


 悠の肩が少し跳ねる。


 振り返ると、村のほうから一人の女性がこちらへ歩いてきていた。


 パンの入った籠を抱えている。


「ちょっと待って!」


 リアが振り返る。


「あ、ミーナさん」


 女性は二人のところまで来ると、リアの隣にいる悠を見た。


 そして、少し首を傾げる。


「リア、その子誰?」


「……」


 悠は黙った。


 突然話を振られると、やっぱり何を言えばいいのか分からない。


 リアが代わりに答えた。


「森に住んでる悠」


「へぇ」


 ミーナは悠を見る。


 じっと見られている気がして、悠は少しだけ身構えた。


 けれど、ミーナは特に何かを聞くこともなく。


「ああ、そうだ」


 持っていた籠を開けた。


「じゃあこれ持っていきな」


「……?」


 差し出されたのは、焼きたてのパンだった。


 まだ少し温かい。


 悠は戸惑いながら受け取る。


「……?」


 何のことなのか分からない。


 ミーナは笑った。


「お近づきのしるし」


「……」


 悠は手の中のパンを見る。


 それから、ミーナを見る。


 そして。


「……ありがとう」


 小さく頭を下げた。


「どういたしまして」


 ミーナは笑った。


「また村に来たら、店にも寄ってよ」


「……」


 悠は少し困った。


 村に入るだけでも、かなり緊張した。


 店に寄るなんて。


 考えただけで少し疲れる。


 けれど。


「……うん」


 断るほどでもなかった。


「じゃあ、またね」


 ミーナは村へ戻っていった。


 その背中を見送る。


 悠は手元のパンを見る。


「……」


 温かい。


 いい匂いがする。


 リアが横から覗き込んだ。


「ミーナさん、パン屋さんなんだ」


「……そうなんだ」


「美味しいよ」


「……へぇ」


 悠はもう一度パンを見る。


 これが。


 村からもらった、最初のもの。


 村には、怖いくらい人がいた。


 声もたくさん聞こえた。


 だから、やっぱり苦手だ。


 でも。


 その村から。


 パンを一つもらった。


 悠はそれを大事そうに抱えたまま、リアと一緒に森へ戻っていった。

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