第十二話 怪我 Scene1 森の奥
数日後。
リアは、いつものように森へ来ていた。
背中には薬草を入れるための籠。
今日も薬草師から頼まれたものを探している。
「……この辺だったと思うんだけど」
木々の間を歩きながら、周囲を見回す。
森に来るのは、もう慣れている。
危険な場所も、ある程度は分かっている。
だから、普段ならそれほど怖くはない。
リアは草むらを覗き込んだ。
「あった」
目的の薬草を見つける。
しゃがみ込んで、丁寧に摘み取る。
籠に入れたところで。
――ガサッ。
「……?」
背後から音がした。
リアが振り返る。
木々の間から、魔物が姿を現した。
「……!」
森に生息している小型の魔物だった。
それほど大きくない。
特別強い魔物でもない。
リアも何度か見たことがある。
でも。
突然、目の前に現れれば話は別だった。
「……こっち来ないで」
リアは後ずさる。
魔物が一歩近づいた。
「……」
リアの背中に冷たい汗が流れる。
戦えるほどの力はない。
だから。
逃げるしかない。
「……!」
リアは踵を返して走り出した。
後ろから魔物の足音が聞こえる。
木々の間を抜ける。
枝を避ける。
足元を見る余裕もなく走る。
そのとき。
「きゃっ!」
足が何かに引っかかった。
体が前へ投げ出される。
――ドサッ。
「……っ」
地面に手をつく。
痛みが走った。
「……いた……」
リアは顔をしかめた。
足を見る。
どうやら転んだ拍子に、足をひねってしまったらしい。
立とうとする。
「……っ」
痛い。
うまく力が入らない。
後ろから、魔物の気配が近づいてくる。
「……どうしよう」
リアは地面に座ったまま、森の奥を見た。
逃げたい。
でも、今は走れそうにない。
さっきまでいつもの森だった。
薬草を探して。
籠に入れて。
帰る。
ただ、それだけのはずだった。
けれど今は。
少しだけ、いつもの森が怖く感じられた。




