Scene4 雨音
スープを飲み終えると、二人とも窓の外を見ていた。
雨はまだ降っている。
屋根を叩く音。
木々の葉に落ちる音。
地面に水が跳ねる音。
森全体が、雨の音に包まれていた。
「……」
「……」
会話はなかった。
リアも何かを話そうとはしない。
悠も、何を話せばいいのか分からない。
いつもなら。
人と一緒にいるだけで、少し落ち着かなくなる。
何か話さないといけない気がする。
沈黙すると、気まずくなる気がする。
だから、できるだけ人と関わらないようにしていた。
でも。
今は違った。
「……」
隣にリアがいる。
それなのに。
疲れない。
何かを話さなければならないわけでもない。
無理に笑う必要もない。
ただ、一緒に雨を見ている。
それだけだった。
しばらくして、リアが窓の外を見ながら呟いた。
「こういう雨の日も好きかも」
悠は少しだけリアを見る。
それから、窓の外へ視線を戻した。
「……僕も」
「そっか」
リアはそれだけ言った。
また静かになる。
でも。
やっぱり気まずくなかった。
悠は雨音を聞きながら思う。
誰かと一緒にいるのに。
こんなに静かにしていられる。
こんな時間もあるんだ。
「……」
窓の外では、雨が降り続いている。
森の景色が少しぼやけて見える。
悠は椅子に座ったまま、雨を眺めた。
そして。
ほんの少しだけ思った。
――誰かといるのも、悪くないかもしれない。
そんなことを考えたのは。
この世界に来てから、初めてだった。




