Scene3 初めて誰かと食事
降っていた。
窓の外から、一定のリズムで雨音が聞こえている。
悠は台所に立っていた。
家の中にリアがいる。
それだけで、いつもより少し落ち着かない。
何をすればいいのか。
考えて。
考えて。
結局、思いついたのは。
「……スープでいいか」
温かいものなら、濡れて冷えた体も少しは温まるだろう。
鍋に水を入れる。
野菜を切る。
採っておいた薬草も、食用にできるものを少しだけ加える。
火をつけると、鍋の中から湯気が立ち始めた。
ぐつぐつと煮込む。
味を確認する。
「……うん」
悪くない。
悠は器にスープを注いだ。
そして、リアの前に置く。
「……どうぞ」
「ありがとう」
リアは両手で器を包んだ。
「……あったかい」
そう言って、小さく息を吹きかける。
それから一口。
「……!」
リアの表情が少し明るくなった。
「美味しい……!」
「……そう?」
「うん!」
リアは嬉しそうに頷いた。
もう一口飲む。
「すごく美味しい」
「……」
悠は何も言わなかった。
ただ。
少しだけ嬉しかった。
自分が作ったものを。
誰かが美味しいと言ってくれた。
それは、今までになかったことだった。
いつもは一人で食べる。
美味しくできても。
失敗しても。
それを知っているのは自分だけ。
でも今日は違う。
向かいに誰かがいる。
「……よかった」
悠は小さく呟いた。
「え?」
「……なんでもない」
悠もスープを口にする。
温かい。
いつもと同じ味のはずなのに。
今日は少しだけ違って感じた。
外では雨が降っている。
森は静かだ。
その静かな家の中で。
二人分の食器から、湯気が立ち上っていた。




