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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第十話 雨の日 Scene1 突然の雨

 その日は、朝から空が暗かった。


 森の上を厚い雲が覆っている。


 悠は窓の外を一度見てから、特に気にすることもなく視線を戻した。


「……今日は雨かな」


 畑の様子を見る限り、しばらくは問題なさそうだった。


 やることもない。


 悠は家の中で本を開いた。


 この世界に来てから、少しずつ増えてきた本。


 文字は言語理解の能力のおかげで読むことができる。


 内容は魔法や薬草についての簡単なものだった。


 ページをめくる。


 静かな時間が流れる。


 しばらくして。


 ぽつ。


 窓に、小さな水滴が落ちた。


 ぽつ、ぽつ。


 少しずつ数が増えていく。


 やがて。


 ザーッ。


 森全体を包むように、雨が降り始めた。


「……やっぱり」


 悠は本を閉じず、そのまま読み続ける。


 雨の日は嫌いではなかった。


 外に出なくていい。


 家の中にいれば濡れることもない。


 雨音を聞きながら本を読む。


 それだけで十分だった。


 しばらくすると、雨はさらに強くなった。


 屋根を叩く音が、一定のリズムで響いている。


 悠はページをめくった。


 そのとき。


 ――コンコン。


「……?」


 手が止まった。


 今。


 何か聞こえた。


 悠は顔を上げる。


 雨音の向こうから、もう一度。


 ――コンコン。


 扉を叩く音。


「……?」


 悠は本を置いた。


 この家を訪ねてくる人なんて、今までいなかった。


 そもそも。


 こんな森の中まで来る人自体が珍しい。


 悠は少し警戒しながら、扉へ向かう。


 そして。


 ゆっくりと扉を開けた。


「……」


 そこに立っていたのは。


 リアだった。


 長い髪から水が滴っている。


 服もすっかり濡れていた。


 籠を抱えたまま、雨の中に立っている。


「……」


「……」


 二人とも、しばらく何も言わなかった。


 悠はリアを見る。


 リアは悠を見る。


 そして悠は。


「……ずぶ濡れ」


 思ったことを、そのまま口にした。


 リアは少し困ったように笑った。


「……うん」


 雨はまだ、激しく降り続いていた。

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