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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene3 初遭遇

ていた。


 来た道を思い出しながら、木々の間を歩いていく。


 その途中だった。


「……あれ?」


 少し先の木の陰に、何かが見えた。


 人影。


 リアは足を止める。


 森の中で人を見ること自体は珍しくない。


 けれど、こんな場所に一人でいる人には心当たりがなかった。


 リアは少しだけ近づいた。


 すると、木の陰から少年が顔を出しているのが見えた。


 年齢は、自分とそう変わらないように見える。


 ただ、こちらを見た瞬間。


 少年の動きが止まった。


 リアも首を傾げる。


「……誰?」


「……」


 返事がない。


 少年は黙ったまま、こちらを見ている。


「……?」


 リアも待ってみる。


 すると、少年は少しだけ口を開いた。


「……こんにちは」


「こんにちは」


 リアが返す。


 そこで、会話が終わった。


「……」


「……」


 森の中に、鳥の声だけが響く。


 少年はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと後ろへ下がった。


 そして。


 逃げようとする。


「待って!」


「……?」


 少年が振り返った。


 リアは少しだけ慌てていた。


 別に捕まえるつもりはない。


 ただ、あまりにも突然だったので、思わず声をかけてしまった。


「この辺に住んでるの?」


「……うん」


「一人で?」


「……うん」


「そうなんだ」


 リアはそれ以上、聞かなかった。


 どこから来たのか。


 なぜ一人なのか。


 家族はいるのか。


 どうして森の中にいるのか。


 聞こうと思えば、いくらでも聞ける。


 でも、少年があまり話したそうではないことくらいは分かった。


 だから、無理に聞く必要はないと思った。


「……」


 少年は黙っている。


 けれど、さっきより少しだけ表情が落ち着いているように見えた。


 リアは籠を背負い直す。


「じゃあ、またね」


「……うん」


 短い返事。


 リアはそのまま歩き出した。


 少年も今度は逃げなかった。


 少し離れたところで、リアは振り返る。


 少年はまだそこに立っていた。


 ただ、こちらを見ている。


 リアは小さく手を振った。


 少年も、ほんの少しだけ手を上げた。


 それだけだった。


 森の中で交わした、ほんの短い会話。


 けれど悠にとっては。


 それで十分だった。


 何も聞かれなかった。


 何も説明しなくてよかった。


 無理に話す必要もなかった。


「……よかった」


 リアの姿が見えなくなってから、悠は小さく呟いた。


 異世界に来てから初めて会った人。


 それなのに。


 不思議と、嫌な感じはしなかった。

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