Scene2 能力確認
家の中。
悠は椅子に座り、改めて昨日の神との会話を思い返していた。
転生させてもらったこと。
この世界で生きていくための能力をもらったこと。
そして――。
「……そういえば、能力ってどんなのもらったんだ?」
転生直前は色々と言われた気がする。
だが、あまりにも多かったせいで、ほとんど覚えていない。
「確認しとくか」
悠は手を前に出した。
「ステータス」
すると、目の前に半透明の画面が現れる。
そこには、自分の情報が表示されていた。
名前:真白悠
種族:人間
年齢:17
職業:なし
レベル:1
体力:測定不能
魔力:測定不能
筋力:測定不能
敏捷:測定不能
スキル:大量
「…………」
悠は画面を見つめた。
「……多すぎない?」
とりあえず、スキル欄を開く。
火、水、風、土、光、闇。
鑑定。
収納。
創造。
身体強化。
状態異常耐性。
言語理解。
道具作成。
料理。
農業。
その他にも大量のスキルが並んでいる。
「…………」
スクロール。
まだある。
さらにスクロール。
まだある。
「……これ、全部覚えないと駄目なのか?」
少し考える。
「……まあ、使うときに考えればいいか」
悠は深く考えることをやめた。
せっかくなので、いくつか試してみることにする。
まずは、一番分かりやすいもの。
「火」
右手を軽く掲げる。
ぽっ。
手のひらに小さな炎が生まれた。
「……おお」
炎は悠の意思に合わせて揺れている。
「本当に出るんだな」
火を消して、次へ。
「水」
今度は空中に水が集まり、小さな水球になった。
「……便利だな」
水球を消す。
「土」
足元の地面が動いた。
土が盛り上がり、簡単な山ができる。
「これなら畑も作れそうだ」
続いて、近くの木を見る。
「……木はどうだろう」
手を向ける。
「切る」
スッ。
細い枝が、綺麗に切り落とされた。
「……」
悠は落ちた枝を拾った。
「薪にできるな」
最後に収納。
「収納」
手に持っていた枝が消えた。
「……お」
頭の中に、収納したものが浮かぶ。
木の枝。
石。
それぞれの個数まで分かる。
「これも便利だな」
枝を取り出す。
ちゃんと手元に戻ってきた。
「……」
悠は少し考える。
「これなら、荷物とか持たなくていいじゃん」
便利。
とにかく便利。
それが悠の感想だった。
魔力が測定不能。
身体能力も測定不能。
大量のスキル。
どう考えても普通ではない。
けれど。
「まあ……生活に使えるならいいか」
悠はステータス画面を閉じた。
強い力を手に入れた。
それ自体は分かった。
けれど、それを使って何かをしたいわけではない。
有名になりたいわけでもない。
誰かに褒められたいわけでもない。
ましてや、世界を救いたいわけでもない。
「……そもそも、そんなことしたら人が集まってきそうだし」
それだけは嫌だった。
悠にとって、チート能力は人生を変えるためのものではない。
むしろ。
「便利な道具がいっぱいある」
その程度の認識だった。
火が使えるなら、料理ができる。
水が出せるなら、水汲みをしなくていい。
土を動かせるなら、畑を作れる。
収納があれば、物を運ばなくていい。
つまり。
「……快適に暮らせる」
それで十分だった。
悠は椅子から立ち上がる。
「さて……」
家の外を見る。
まだ何もない。
食べ物もない。
畑もない。
水場もない。
「まずは生活を整えるところからだな」
世界最強の力を持った少年が、最初に始めたこと。
それは――。
「……畑、どこに作ろうかな」
世界を変えることでも。
魔王を倒すことでもなかった。
自分が今日から暮らしていくための、生活の準備だった。




