Scene2 寝床
朝食を終えた悠は、食器を片付けていた。
その足元を、ノアがてくてくと歩いている。
「……」
悠はノアを見る。
そして、家の中を見回した。
ベッドは一つ。
もちろん、悠が使っているものだ。
ノアは今のところ、床で丸くなって寝ている。
「……」
それでも眠れるだろう。
けれど。
「……寝る場所、作るか」
悠はそう呟いた。
創造魔法を使う。
「小さいのでいいよな」
ノアの身体に合わせて、大きさを調整する。
木材が集まり、形を変えていく。
やがて――。
小さな木製のベッドが完成した。
悠はそれを部屋の隅に置く。
その上に、柔らかい布を敷く。
「……こんな感じ」
ノアを呼ぶ。
「ノア」
「きゅ?」
ノアが悠を見る。
悠は小さなベッドを指差した。
「これ、お前の」
ノアはベッドを見る。
近づく。
匂いを嗅ぐ。
前足で布をちょん、と触る。
そして――。
「きゅ!」
嬉しそうに鳴いた。
そのままベッドへ飛び乗る。
くるくると何度か回って。
最後に、ぽすん、と身体を丸めた。
「……」
悠はその様子を眺める。
ノアは気に入ったらしい。
尻尾をぱたぱたと動かしている。
「……よかったな」
「きゅー」
返事をするように鳴く。
悠は少しだけ笑った。
昨日まで、この家には悠しかいなかった。
ベッドも一つ。
食事も一人分。
家具も、自分が使うものだけ。
けれど今は――。
小さなベッドが一つ増えた。
それだけなのに、部屋の雰囲気が少し変わった気がする。
「……まあ」
悠はノアを見る。
「悪くないな」
ノアは小さなベッドの上で、気持ちよさそうに目を閉じた。
新しい寝床を気に入ったらしい。
悠はそんなノアを見ながら、自分のベッドへ向かった。
家の中に――。
また一つ、ノアのための場所が増えた。




