第七話 ドラゴンとの暮らし Scene1 食事
朝。
悠はいつものように、朝食を作っていた。
昨日までは一人分でよかった。
けれど――。
今日は違う。
「……」
悠の足元には、小さなドラゴンがいる。
ノアだ。
黒い鱗を持った小さな身体で、悠が料理をしている様子をじっと見上げている。
「……」
視線を感じる。
悠はちらりと下を見る。
ノアと目が合った。
「……食べるのか?」
「きゅ!」
元気な返事が返ってきた。
「……分かった」
悠はノアの分も用意する。
小さな皿に、食べやすい大きさにした肉や野菜を盛る。
「ほら」
皿を床に置く。
すると――。
ノアは一瞬で飛びついた。
「きゅっ!」
ぱくっ。
もぐもぐ。
「……」
食べる。
ものすごい勢いで食べる。
一口。
二口。
三口。
あっという間に皿が空になった。
「……」
悠は空になった皿を見る。
「……もう食べたの?」
「きゅ!」
ノアは元気よく鳴いた。
そして――。
悠のほうを見る。
「……」
悠は嫌な予感がした。
「……まさか」
ノアが空になった皿を前足でちょんちょんと叩く。
「きゅー」
「……足りないの?」
「きゅ!」
即答だった。
悠は少し驚いた。
「……お前、そんなに食べるの?」
「きゅ!」
なぜか誇らしげに胸を張るノア。
「……」
悠はノアを見る。
身体はまだ小さい。
なのに、食べる量はかなり多い。
「ドラゴンって、みんなこうなのか……?」
もちろん、ノアは答えない。
ただ。
「きゅー!」
もう一度、皿を叩いた。
「……はいはい」
悠は追加の料理を用意する。
今度は少し多めに盛る。
ノアは嬉しそうに食べ始めた。
「きゅっ、きゅっ」
「……」
悠は自分の朝食を食べながら、その様子を眺める。
よく食べる。
本当によく食べる。
でも――。
「……まあ、元気ならいいか」
悠は小さく呟いた。
ノアはそんな悠の言葉など気にせず、夢中で食べ続けている。
「きゅー!」
「……食べ終わったら、もう少し作るからな」
「きゅ!」
元気な返事。
悠は少しだけ笑った。
昨日まで、一人分だけ作っていた朝食。
今日からは――。
二人分になった。




