Scene2 夏らしい時間
昼食を終えても。
誰もすぐには帰ろうとしなかった。
木陰に座ったまま、川を眺めている。
さらさらと。
水が流れている。
時々、岩にぶつかった水が小さく音を立てる。
「今日、暑いな」
「でも川に入ると涼しいよ」
「もう少ししたら、また泳ごう!」
村人たちの会話が聞こえる。
少し離れたところでは。
子供たちが笑っていた。
「こっち来て!」
「待って!」
「また水かけるぞ!」
その声に、また笑い声が重なる。
悠は木陰に座ったまま。
黙って、その様子を見ていた。
「……」
春祭りのときとは違う。
あのときも人は多かった。
けれど。
屋台や人の流れが集まっていて。
どこを見ても人がいるような感じだった。
今も、周りには村人がいる。
それでも。
あまり窮屈には感じなかった。
川辺は広い。
人と人の間にも、自然と距離がある。
少し離れたところに座っていても。
誰も気にしない。
そして。
ずっと聞こえている。
川の音。
「……」
さらさら。
さらさら。
水の音を聞いていると。
なんとなく、落ち着く。
子供たちの声も。
村人たちの話し声も。
川の音に混ざっている。
悠は膝を抱えるようにして座りながら。
しばらく何も考えずに川を眺めていた。
「……」
人がいる。
でも。
それほど疲れない。
春祭りのときよりも。
ずっと楽だった。
悠は手元に残っていた水玉瓜を一口食べる。
冷たくて、甘い。
川の音がする。
木陰は涼しい。
少し離れたところでは、みんなが笑っている。
「……」
悠は小さく息を吐いた。
こういう場所なら。
人が多くても。
少しくらいなら、大丈夫かもしれない。
そんなことを思いながら。
悠はもう一度、川を眺めた。
夏の昼。
川の音と。
木陰と。
冷たい果物。
それだけで。
なんとなく、心地よかった。




