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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第58話 夏の果物 Scene1 川辺で昼食

昼。


川遊びをひと休みして、村人たちは川辺に集まっていた。


木陰に布を広げる。


その上には、村から持ってきた料理が並んでいく。


パン。


焼いた肉。


野菜。


それから、いくつかの果物。


「いっぱいあるね」


リアが並べながら言う。


「みんなで食べるからな」


ハンスが笑う。


悠は少し離れたところに座って、その様子を見ていた。


「……」


パンを一つ。


焼いた肉を少し。


野菜も取る。


いつものように、食べる分だけ。


そのとき。


ミーナが大きな果物を持ってきた。


「これも食べましょう」


それは、かなり大きかった。


緑色の丸い果物。


表面には、ところどころ模様が入っている。


悠はじっと見る。


「……?」


見たことがない。


ミーナが包丁を入れる。


すぱっ。


大きな果物が切り分けられる。


すると。


中から赤い果肉が現れた。


黒い小さな種も入っている。


「……」


悠は少し驚いた。


見た目は、前の世界で見た果物にかなり似ている。


けれど。


この世界では別の名前らしい。


「これはね、水玉瓜っていうの」


ミーナが言う。


「夏になるとよく食べるのよ」


「……水玉瓜」


悠は名前を繰り返す。


名前は違う。


けれど。


どう見ても。


あれにしか見えない。


冷たい水で冷やしてあったらしく、赤い果肉からひんやりした水気が感じられる。


「悠も食べてみて」


リアが一切れ差し出した。


「……うん」


悠は受け取る。


そして。


一口。


「……」


しゃく。


みずみずしい。


口の中に、甘さが広がる。


夏の暑さで少し疲れていた身体に、冷たさが心地いい。


「……甘い」


思わず、そう呟いた。


リアが笑う。


「おいしい?」


「……うん」


悠はもう一口食べる。


甘い。


それに、冷たい。


川辺で食べるにはちょうどよかった。


「きゅ!」


横から声がした。


ノアだった。


悠の持っている水玉瓜を見ている。


「……」


ものすごく欲しそうだ。


「……食べる?」


悠が少しだけ差し出す。


「きゅ!」


ノアが飛びついた。


しゃく。


しゃく。


しゃく。


「……」


早い。


一瞬で食べ進めていく。


「きゅ!」


さらに欲しそうにする。


「……」


悠は水玉瓜を見る。


そしてノアを見る。


「……食べすぎ」


「きゅ?」


ノアは不思議そうに首を傾げた。


その様子を見て。


周りから笑い声が上がった。


川の音。


木々の間から差し込む夏の日差し。


冷たい水玉瓜。


そして。


夢中で果物を食べるノア。


悠は水玉瓜をもう一口食べた。


「……」


やっぱり。


夏には、こういうものがあるらしい。


「きゅー」


ノアはまだ食べている。


「……お前、本当に食べすぎ」


悠の声に。


また笑い声が響いた。


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