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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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Scene2 ノアが落ちる


その頃。


ノアは川岸にある大きな岩の上を歩いていた。


「きゅ」


岩の上を、てくてく進んでいく。


悠たちが水遊びをしているのが見える。


子供たちの声も聞こえる。


どうやらノアも、自分が一緒に遊んでいるつもりらしい。


「きゅー」


少し調子に乗ったのか。


岩の端へ。


さらに一歩。


もう一歩。


「きゅ?」


足元が少し濡れていた。


その瞬間。


つるっ。


「きゅっ!?」


ノアの身体が傾く。


そして。


ぼちゃん。


水面に小さな波紋が広がった。


「……?」


悠が振り返る。


さっきまで岩の上にいたノアがいない。


代わりに。


川の中から。


「きゅ……」


ノアの顔が、ひょこっと出てきた。


「……ノア」


悠はため息をつきながら、ノアのところまで歩いていく。


ノアは特に慌てる様子もない。


悠が身体を持ち上げる。


「……大丈夫?」


「きゅ」


どうやら。


全然気にしていないらしい。


悠はノアを見る。


濡れた身体。


水滴のついた顔。


そして。


何事もなかったような表情。


「……」


悠はもう一度、ため息をついた。


「……気をつけて」


「きゅ」


ノアは素直に返事をした。


たぶん。


反省している。


たぶん。


子供たちが、その様子を見て笑っている。


「ノア、落ちた!」


「大丈夫だったね!」


「きゅ!」


ノアはむしろ得意そうだった。


悠はそんなノアを見て。


「……まあ、怪我してないならいいか」


そう呟いた。


川は変わらず、静かに流れている。


子供たちの笑い声が響く。


ノアはまた岩へ行こうとしている。


「……おい」


悠が呼び止める。


「きゅ?」


「……もう岩はいい」


「きゅ……」


ノアは少しだけ残念そうにした。


けれど。


すぐに川の浅瀬へ戻っていった。


「きゅー!」


悠はその後ろ姿を見ながら。


小さく息を吐いた。


夏の川で起きた出来事は。


それだけだった。


大きな事件でもない。


ただ。


みんなで笑った、夏の一コマだった。


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