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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第57話 ノア、川に落ちる Scene1 子供たちと遊ぶ


川の水に足を浸したまま。


悠は少し離れた場所で、リリたちが遊ぶのを眺めていた。


「わー!」


「こっちこっち!」


子供たちは水を掛け合ったり、浅瀬を走ったりしている。


その様子を見ていると。


リリが悠に気づいた。


「悠も来てよ!」


「……ここでいい」


春祭りのときと、よく似たやり取りだった。


けれど。


リリは諦めない。


「少しだけ!」


「……」


悠は川を見る。


子供たちを見る。


それから、自分の足元を見る。


さっきまで水に入っていた。


思ったより悪くない。


「……少しだけなら」


「やった!」


リリが嬉しそうに声を上げる。


悠は浅瀬をゆっくり歩いて、子供たちの近くまで行った。


水は膝より下。


流れも穏やかだ。


「ここなら……」


そう呟いた瞬間。


ぱしゃっ。


水が飛んできた。


「……」


悠の服に水滴がかかる。


リリが笑っている。


「それ!」


「……」


悠は無言でリリを見る。


どうやら、遊びが始まったらしい。


もう一度。


ぱしゃっ。


今度は少し大きな水しぶき。


「……」


悠は少しだけ水をすくった。


そして。


ぱしゃ。


控えめに返す。


「わっ!」


リリが避ける。


子供たちが笑い出した。


「悠もやった!」


「もっと!」


「……いや、これくらいで」


そう言いながらも。


悠はもう一度、水をすくった。


今度は少しだけ遠くへ。


ぱしゃっ。


「きゃー!」


子供たちが逃げる。


悠の口元が、少しだけ緩んだ。


春祭りのときは。


ただ見ているだけだった。


けれど今日は。


自分も少しだけ、水を掛けている。


大したことではない。


それでも。


「……」


なんとなく。


悪くなかった。


その少し離れたところでは。


ノアが大きな岩の上に乗っていた。


「きゅ」


悠は一瞬だけそちらを見る。


「……あいつも遊んでるのか」


ノアは尻尾を振りながら、川を覗き込んでいた。


その姿を見て。


悠はまた少しだけ笑った。


「……落ちるなよ」


もちろん。


ノアがその言葉を聞いていたかどうかは、分からない。


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