第五話 異世界料理 Scene1 料理をする
中。
悠は机の前に座っていた。
目の前には、今日森で集めてきた食材が並んでいる。
野菜。
果物。
川で見つけた魚。
それから、見たことのない植物や木の実。
「……」
しばらく眺める。
昨日までは、食べられるものを見つけるだけで精一杯だった。
けれど今は違う。
畑もある。
井戸もある。
台所も作った。
「……料理、するか」
悠は立ち上がった。
まずは食材を確認する。
「鑑定」
名前。
食べられるかどうか。
毒がないか。
どんな味なのか。
一つずつ確認していく。
「……これは食べられる」
次。
「……これも大丈夫」
さらに次。
「……苦いのか」
知らない食材ばかりだ。
地球にいた頃なら、名前すら分からないものもある。
それでも鑑定を使えば、食べられるかどうかは分かる。
「……便利だな」
まず野菜を切る。
包丁を入れると、しゃくっと小気味のいい音がした。
魚も下処理する。
そして火をつける。
「……さて」
鍋を置く。
野菜を入れる。
魚も入れる。
水を加える。
ここまでは順調だった。
問題は――。
「……味付け」
悠は棚を見る。
塩。
砂糖。
油。
香辛料。
一応、少しずつ用意してある。
けれど、種類が少ない。
「……地球ほど何でもあるわけじゃないんだな」
当たり前だった。
ここは異世界。
スーパーがあるわけでもない。
調味料が何十種類も並んでいるわけでもない。
だからこそ、あるものを使うしかない。
まず塩を少し。
砂糖を少し。
油を加える。
香辛料も少量。
「……これくらい?」
味を見てみる。
「……」
少し薄い。
塩をほんの少し足す。
もう一度。
「……うん」
今度は悪くない。
鍋の中から湯気が立ち上る。
野菜と魚の香りが、部屋いっぱいに広がっていく。
悠はその匂いを嗅いだ。
「……いい匂い」
火加減を調整しながら、ゆっくり煮込む。
異世界の食材。
異世界の調味料。
そして、自分で作った料理。
やがて。
「……できた」
皿に盛り付ける。
見た目は普通の料理。
けれど、悠にとっては特別だった。
この世界で初めて、自分で作った料理だ。
悠は椅子に座る。
スプーンを手に取る。
少しだけ緊張しながら、口へ運ぶ。
「……」
もぐ。
しばらく味わう。
「……うん」
悪くない。
むしろ――。
「……美味しい」
異世界の食材だからなのか。
それとも、自分で作ったからなのか。
悠には分からなかった。
ただ。
一つだけ分かったことがある。
森で果物を拾って食べるだけだった昨日よりも。
自分で料理を作って食べる今日のほうが――。
少しだけ、この世界で暮らしている感じがした。
悠はもう一口、料理を食べる。
「……次は、もっといろいろ作ってみるか」
そう呟きながら、ゆっくりと食事を続けた。




