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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第46話 魔女の家

フィオナの一日は、静かに始まる。


朝。


窓から差し込む光で目を覚ますと、フィオナは一人で起き上がる。


誰かに起こされることもない。


誰かを起こす必要もない。


顔を洗い、簡単に朝食を済ませる。


それから籠を手に取る。


「……行ってくる」


誰もいない家に向かって呟く。


返事はない。


フィオナはそのまま森へ入っていった。


森の中には、薬草がいくつも生えている。


フィオナは一つ一つを見分けながら、必要なものだけを摘んでいく。


葉。


花。


根。


似たような植物でも、使えるものと使えないものがある。


フィオナは慣れた手つきで採取し、籠へ入れていく。


しばらくすると、籠は薬草でいっぱいになった。


家に戻ると、採ってきた薬草を種類ごとに分ける。


一部は軒先に吊るす。


一部は細かく刻む。


そして残ったものを、鍋へ入れる。


「……」


火をつける。


水を加える。


薬草を入れる。


ゆっくりと煮込んでいく。


鍋から立ち上る香りが、家の中に広がっていく。


フィオナはそれを確認しながら、棚から小さな瓶を取り出した。


魔力を込める。


淡い光が鍋の中に落ちる。


ぐつぐつと煮立っていた液体が、少しずつ色を変えていく。


魔法薬。


フィオナにとっては、特別な作業ではない。


毎日の生活の一部だった。


薬を作り終えると、瓶に移す。


棚に並べる。


それで終わり。


次にフィオナが手に取ったのは、一冊の本だった。


椅子に座り、本を開く。


静かな家の中でページをめくる音だけが響く。


外から聞こえるのは鳥の声と風の音。


誰かが話しかけてくることもない。


フィオナは、その時間を好んでいた。


一人でいること。


それが、自分にとって一番楽だと分かっている。


人が嫌いなわけではない。


村へ行けば挨拶くらいはする。


必要なら人と話すこともできる。


ただ。


長く一緒にいると疲れる。


だから。


「……一人でいい」


それがフィオナの答えだった。


昼になれば、一人で食事をする。


簡単なスープ。


パン。


森で採った果物。


それだけ。


食べ終われば、食器を片付ける。


また本を読む。


また薬草を扱う。


そして夜になれば眠る。


それを繰り返す。


とても静かな生活だった。


◇


「……」


悠は、フィオナの家の中を見回していた。


机。


椅子。


ベッド。


棚。


鍋。


食器。


それ以外には、ほとんど何もない。


必要なものだけ。


それ以上は置いていない。


悠は自分の家を思い浮かべた。


自分の家にも、最初は何もなかった。


けれど。


ベッドを作った。


机を作った。


椅子も作った。


食器を置く場所も作った。


料理をするための道具も増えた。


風呂まで作った。


気がつけば、それなりに生活らしい家になっている。


フィオナの家は違う。


生活するために必要なものだけが置かれている。


それでも。


妙に落ち着く。


悠は部屋を見ながら、ぽつりと言った。


「……似てる」


フィオナが本から顔を上げる。


「……何が?」


「……生活」


フィオナは部屋を見回した。


それから悠を見る。


「……そう?」


「……うん」


悠は少し考える。


「……一人でいるところとか」


「……」


フィオナは黙った。


そして、ほんの少しだけ目を細めた。


「……そうかも」


二人とも、また黙る。


けれど。


今までの沈黙とは少し違っていた。


悠はフィオナが、ただ人付き合いを避けているわけではないことに気づいた。


一人でいることを、自分で選んでいる。


それが、この人にとって自然なのだ。


そしてフィオナも。


悠が無理に一人になろうとしているわけではないことに気づいた。


人といると疲れる。


だから距離を取る。


けれど。


誰かといることそのものを嫌っているわけではない。


二人は、そこまで言葉にしなかった。


ただ。


「……」


「……」


少しだけ、相手のことが分かった気がした。


それだけだった。


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