ラスト
森の中を歩き。
やがて、いつもの家が見えてきた。
窓から、暖かな明かりが漏れている。
悠はその明かりを見て、少しだけ足を緩めた。
「きゅ!」
ノアが先に駆けていく。
そして、慣れた様子で家の中へ入っていった。
「……」
悠も後を追う。
扉を開ける。
いつもの家。
いつもの匂い。
いつもの静けさ。
悠は靴を脱ぎながら、小さく呟いた。
「……ただいま」
返事はない。
けれど。
それでいい。
ここは、いつもの家だ。
今日までと同じ。
明日も、きっと同じような一日になる。
畑を見て。
ノアの世話をして。
食事をして。
夜になれば眠る。
何も変わらない。
――そう思った。
けれど。
一つだけ。
今までとは違うものがあった。
来年の予定。
「……」
悠は、ふと立ち止まる。
来年。
また祭りがある。
そして。
自分も行く。
それはつまり。
来年も、この世界で暮らしているということだった。
森の家で。
ノアと。
畑と。
そして、たまには村へ行って。
リアや村の人たちと会う。
そんな未来を。
悠は、いつの間にか当たり前のように思い浮かべていた。
「……」
特別な決意はない。
何かを誓ったわけでもない。
ただ。
来年も、ここにいる。
それが自然だった。
悠は少しだけ考えて。
「……まあ、来年も人は多そうだけど」
「きゅ?」
ノアが振り返る。
「……お前は楽しそうだったけど」
「きゅ!」
ノアが元気よく鳴く。
悠は小さく息を吐いた。
そして、そのまま寝室へ向かう。
ベッドに入る。
布団をかぶる。
今日一日のことを思い返す。
人が多かった。
騒がしかった。
疲れた。
でも。
悪くなかった。
悠は目を閉じる。
明日になれば、またいつもの生活が始まる。
そして。
その先には、来年がある。
そんなことを考えながら。
悠は静かに眠りについた。




