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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第42話 春の帰り道 Scene1 森へ


祭りの夜。


村の明かりが、少しずつ遠ざかっていく。


悠は森へ続く道を歩いていた。


足元にはノアがいる。


「きゅ」


「……」


その少し後ろを、リアが歩いている。


祭りの余韻が、まだ村のほうに残っていた。


さっきまで聞こえていた音楽も。


村人たちの笑い声も。


もう、ほとんど聞こえない。


森の中は静かだった。


いつもの夜が戻ってきている。


しばらく歩いたところで、リアが声をかけた。


「今日は楽しかった?」


「……」


悠は答えなかった。


少し考える。


屋台で食べた料理。


子供たち。


村人たちの踊り。


みんなで囲んだ食卓。


夜空に上がった花火。


思い返してみる。


「……分からない」


「またそれ?」


リアが笑う。


「うん」


悠も小さく頷く。


楽しかったのか。


疲れたのか。


どちらかと言えば、疲れた。


人も多かった。


騒がしかった。


帰りたいと思ったこともある。


けれど。


「……でも」


悠は少しだけ笑った。


そして、前を向いたまま言う。


「……来年も行く」


リアが少し驚いた顔をする。


けれど、すぐに笑った。


「うん」


それ以上は、何も言わなかった。


悠も黙って歩く。


足元ではノアが小さく鳴いている。


「きゅ」


「……お前も来るんだろ」


「きゅ!」


夜空を見上げる。


春の夜空に、星が浮かんでいた。


悠はしばらくそれを眺めて。


やがて、視線を前へ戻す。


森の奥には、自分の家がある。


明日も、いつも通りの一日が始まる。


畑を見て。


ノアの世話をして。


何か食べて。


たぶん、リアも来る。


そして。


来年になれば、また祭りがある。


悠は何も言わず、森の中へ歩いていく。


その後ろを、リアが静かについてくる。


春の夜。


祭りの明かりを背に。


悠は、自分の家へ帰っていった。


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