Scene2 子供たち
屋台をいくつか見て回ったところで。
通りの向こうから、子供たちの声が聞こえてきた。
「待てー!」
「こっちこっち!」
「負けないからね!」
何人もの子供たちが、広場を走り回っている。
その中に、見慣れた姿があった。
「悠ー!」
リリだった。
こちらに気づいたらしい。
リリは走ってくると、そのまま悠のところまでやってきた。
「こっち!」
「……何?」
「いいから!」
リリが悠の手を引っ張る。
「……」
悠は引かれるまま、広場のほうへ歩いていく。
そして。
子供たちが遊んでいる場所まで来たところで、悠は小さく呟いた。
「……嫌な予感がする」
「大丈夫だよ!」
何が大丈夫なのかは分からない。
そのまま、子供たちの遊びに巻き込まれていく。
走り回る子供たち。
笑い声。
次々と変わっていく遊び。
悠は、その輪の中心には入らなかった。
少し離れたところに立って、子供たちを眺めている。
「悠もやろうよ!」
一人の子供が声をかけてくる。
悠は首を横に振った。
「……見てる」
「えー!」
「やろうよ!」
「……見てるだけでもいいでしょ」
子供たちは顔を見合わせる。
少しだけ考えて。
「……まあ、いいか!」
「じゃあ見てて!」
リリも笑う。
「うん。じゃあ見てて!」
「……うん」
悠はその場に座った。
子供たちは、また元気に走り出す。
「こっち!」
「逃げろー!」
「リリ、そっち!」
悠はそれを眺める。
別に、一緒に走りたいわけではない。
大きな声を出したいわけでもない。
ただ。
こうして見ているのは、悪くなかった。
しばらくすると、一人の子供が悠のところまで戻ってくる。
「悠、ちゃんと見てる?」
「……見てる」
「ほんと?」
「……ほんと」
「じゃあ、今の見た?」
「……見た」
「すごかったでしょ!」
「……うん」
それだけで、子供は満足したように笑って、また走っていった。
悠はその背中を見送る。
そして、少しだけ口元を緩めた。
無理に輪の中に入らなくてもいい。
話し続けなくてもいい。
ただ、ここにいて。
見ているだけでもいい。
それで誰も怒らない。
「……」
悠はもう一度、走り回る子供たちを見る。
祭りの音は、相変わらず少し騒がしい。
それでも。
さっきほど嫌ではなかった。




