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異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


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第38話 祭りを見る Scene1 屋台


祭りの通りを、悠とリアは並んで歩いていた。


普段なら何もない道に、今日はたくさんの屋台が並んでいる。


焼いた肉の香ばしい匂い。


採れたての果物。


焼きたてのパン。


串に刺された料理。


甘い菓子。


村で普段から食べているようなものもあれば、少しだけ手を加えて売られているものもある。


悠は、屋台を見ながら歩いていた。


「……」


目を輝かせているわけではない。


どれを食べようか迷っているわけでもない。


ただ、珍しそうに眺めている。


いつもの村とは、少し違う。


それが面白かった。


リアが隣から声をかける。


「何か食べる?」


「……」


悠は少し考える。


そして、一つの屋台を指差した。


「……これ」


「それ?」


「……うん」


リアも屋台を見る。


焼いた肉を串に刺したものだった。


「じゃあ、これにしようか」


リアが店の人に声をかける。


しばらくして、串が一本手渡された。


悠は受け取る。


湯気が立っている。


少しだけ匂いを嗅いでから、一口。


「……」


悠は黙って噛んだ。


リアが隣から様子を見る。


「どう?」


悠はもう一度、串を見る。


「……おいしい」


その一言を聞いて、リアが笑った。


「よかった」


悠はそのまま、もう一口食べる。


特別な味というわけではない。


いつも村で食べているような、素朴な味。


でも。


外で食べると、少し違って感じる。


周りから聞こえる話し声。


屋台から漂ってくる匂い。


人の気配。


それらに囲まれながら、悠は黙々と串を食べていた。


食べ終わる。


悠は空になった串を見た。


そして。


「……」


もう一度、屋台を見る。


リアが気づいた。


「もう一本?」


「……うん」


「ふふっ」


リアが笑う。


「気に入ったんだね」


「……別に」


そう言いながら、悠はもう一本買った。


リアは何も言わず、その隣を歩く。


悠も何も言わない。


ただ、さっきより少しだけ歩く速度が遅くなっていた。


急いで帰る必要はない。


祭りは、まだ始まったばかりだった。


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