↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で最強になったので、世界の片隅でひっそり暮らします  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/121

Scene2 帰ろうとする悠


祭りの会場が見えた瞬間。


悠は、思わず一歩後ろへ下がった。


目の前には、いつもとは違う村の景色が広がっている。


通りには色とりどりの飾りが並び、屋台からは料理の匂いが漂っている。


あちこちから人の声が聞こえ、子供たちが走り回っていた。


笑い声。


話し声。


呼び込みの声。


普段の静かな村からは想像できないほど、人がいる。


悠はその光景をしばらく眺めていた。


そして。


「……帰ろうかな」


ぽつりと呟いた。


「え?」


隣にいたリアが振り返る。


悠は祭りのほうを見たまま答えた。


「……人、多い」


「ああ……」


リアは会場を見渡す。


確かに、今日は村の人がほとんど集まっている。


「うん。今日はお祭りだからね」


「……無理そう」


それだけ言うと、悠は踵を返した。


来た道を戻ろうとする。


やっぱり、こういう場所は苦手だ。


人が多い。


音も多い。


何をすればいいのかも分からない。


家に帰れば、いつもの静かな時間に戻れる。


そのほうがいい。


そう思っていた。


けれど。


リアは悠を追いかけて、腕を掴んだりはしなかった。


無理に引き止めることもしない。


ただ、少しだけ後ろから声をかける。


「そっか」


悠の足が止まる。


「……」


振り返る。


リアは、いつものように穏やかな顔をしていた。


「じゃあ、帰る?」


「……」


少し意外だった。


もっと、


『せっかくだから行こうよ』


とか。


『大丈夫だから』


とか。


そう言われると思っていた。


でも、リアはそれ以上何も言わない。


悠が帰りたいなら、それでいい。


そんな顔をしていた。


「……」


悠は祭りを見る。


やっぱり人が多い。


騒がしい。


苦手なのは間違いない。


帰りたい。


その気持ちは、まだある。


けれど。


隣にはリアがいる。


リアと一緒なら。


少しくらいなら――。


「でも」


リアが、ぽつりと言った。


「少しだけ一緒にいようよ」


悠が顔を上げる。


「……少しだけ?」


「うん」


リアは小さく笑った。


「疲れたら帰ろう」


「……」


無理に残る必要はない。


最後までいる必要もない。


嫌になったら帰っていい。


その言葉を聞いて、悠はもう一度祭りを見る。


人が多い。


やっぱり苦手だ。


でも。


今日は、リアが隣にいる。


「……少しだけなら」


悠がそう言うと。


リアは嬉しそうに頷いた。


「うん」


二人は、並んで祭りのほうへ歩き出した。


悠はまだ少し緊張していた。


それでも。


今度は、帰るためではなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。