6.
「気難しい子供だったんですね……シグルド殿下……」
「兄上! カスミに余計なことを吹き込まないで下さい!」
「あはは、ごめんごめん」
カトルフェスの第一王子シヴェン殿下は生まれつき身体が弱く、王都を離れた場所の王領で静養生活を送っている。
王太子はシヴェン殿下ではなく、シグルド殿下だということを私はつい最近知った。
今日はシグルド殿下とよく似ているというシヴェン殿下が住む王領を二人で訪ねて。
少し笑っただけで、苦しそうに息を整えるシヴェン殿下の背をシグルド殿下がゆっくり摩る。
私はそれがどうしても悲しくて、胸のあたりを押さえた。
「兄上、そろそろ中に戻りましょう。今日は少し肌寒い」
「そうだね。ただ、転移魔法じゃなくて、歩いて戻りたいんだけどいいかい?」
「そうですね……無理そうなら言ってください。転移魔法で寝台まで連れていきますから」
「うん。ありがとう」
ああ、でも。
私も家族に、みんなに会いたい……。
◇
「カスミ、どうした」
魔力の時間だけど、いつものソファで項垂れる私を見たシグルド殿下の距離が近い。
「ただのホームシックです! 今日はお休みさせて下さい」
手で目を覆って、勢いで言い放った私の言葉は震えていた。
「ごめん。うまく言えないけど、ごめん……」
「抱きしめないで下さい」
心臓がうるさいのバレちゃいそう。
「ごめん、でもやめられない」
でも次から次に溢れ出てくる涙は、シグルド殿下のシャツに染み込んでいく。
頭を包む大きな手に撫でられると、もうダメだった。
「……私、役に立ってると思うんだ」
「ああ。おかけで私もだいぶ楽になった。魔力が暴走せず、しかも溜めておいて非常時にも使えるなんて理想的だ」
「ミテラ大陸の未来も明るいよね」
「カスミのおかげでな」
「……なら、十分」
「ありがとう。カスミ」
頑張っても帰れないならこの世界で幸せを見つけるのも、悪くない……よね。
シグルド殿下の腕の中。私は涙を止めようと瞳を閉じた。




