狐憑き
まだ俺のターン(日曜日)は終わってないぜ!
「と、言うわけだ」
少女の語った事の顛末に蒼太はみーちゃんに見せられた自身の記憶が正しかったことを再認識した。
「やっぱり君たちが……!」
「だからってどうだと言うの? 私はこの世界に正しいことをしているわ?」
「そして私はお姉様――三ツ境様の下僕ですんで。言われた通りにするだけよ」
「じゃあ……じゃあ僕は誰を怨めばいいんだよっ!」
蒼太は地面に転がったままみっともなく叫んだ。
総合的に見てみーちゃんが元凶であることは間違いない。
しかしだからと言って「はいそうですか」と納得することはできない。
それにルルリエとセンコだってこの世の存在ではない。
だから蒼太は最後の家族を奪った霧子たちにすべての責任を転嫁し、否定することで自身とルルリエ達の存在を正当化しようとした。
「お前が誰を怨もうとも構わないが正しいのは力のある方。私だ」
「くっ……!」
だがそれも圧倒的力の前に為す術なく受け入れるしかなかった。
蒼太が抵抗する気を無くし力を抜くと、彼の身体に生えていた獣の部分がスゥっと消えて行った。
「も、もしかして私のお友達だったみーちゃんが……?」
情報過多で混乱していたルルリエがやっとまとまったのかぐるぐるさせていた目を瞬かせて不安げに言う。
「そうね。見たわけじゃないから何とも言えないけど名前の一致とこの世界で蒼太の場所に来た事は無関係だとは言い難いわね」
「そ、そうなん……だ……」
同じ子が友達だと分かって嬉しい気持ちもある反面こちらの世界では死んでいる上、蒼太の家族の敵でもあるわけでルルリエは複雑な気持ちを抱え蒼太の顔を直視することが出来ず目を逸らす。
「よしっと。じゃあ納得もできたでしょうし消えようか」
三ツ境と呼ばれた少女は座っていた手すりから勢いをつけて立ち上がると腰から2枚の札を取り出した。
それは彼女たちのような存在を消す術式が書かれている札でそこに込められた力の大きさはそう言うのに疎い蒼太にもわかった。
「わしらは……わしらは存在しているだけで罪なのか!?」
その前に全く納得できていないと言うようにセンが立ちふさがった。
「えぇ。例えるならそうねぇ……そこの子は外来種で貴方はガン細胞と言ったところかしら。放っておけばいくらでも出てくるからこうして私たちが時間と労力を割いて駆除してるわけ。貴方も神の端くれだったならわかってるんでしょ? もう存在してはいけないって。わかったならさっさと退治されてくれない? 私も忙しいの」
「悪いがそれはできん相談じゃの……例えわしらが悪鬼羅刹だったとしても」
センもルルリエもこの世から消されると聞いて大人しくしているようなことはしなかった。
当たり前だ。誰しも生きたい。
大切な人が、自分を知ってくれている人がいるならばなおさらだ。
だから立ち向かう。
「はぁ……やっぱ話し合いでってのは無理じゃんか」
「私がやりましょうか?」
「いいわよ。ユキは人払いの結界の方に集中して」
「分かりました」
三ツ境の言葉に蒼太はハッとして辺りを見渡す。
周辺の風景に変わりはないが確かに人気は感じられない。
恐らく助けを求めて叫んでも無駄と言う事だろう。
万事休すか。
「蒼太、すまんが少しの間身体を借りるぞ」
「え――――?」
センの声が聞こえたと思ったと同時に蒼太の意識がふわりと浮いた。
その感覚を蒼太は知っていた。
(あの時と同じっ……!?)
みーちゃんに体を乗っ取られた時のような強引な精神への接続。
だがあの時よりも蒼太の意識ははっきりしていた。
自分で自分の身体が動かせない。そんな不思議な感覚の中頭に声が響く。
『狐は化かすだけだと思うなよ?』
その威厳のある声は自分から発せられたものだった。
久しぶりの身体を慣らすように首を回した際に見えた視点は高く、自身の身体は先ほどの変身よりも毛深く先の白いふさふさの尾が視界の端に映った。
「ちっ。狐憑きになったか」
蒼太はセンに憑かれ、尾の先が白い大きな狐になっていた。
悪あがきの総力戦的なサムシング。




