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ろりかむほーむ ~幼女がせめてきたぞっ!~  作者: 白井アレ
第一章 祝福された動人形(Living doll)
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何時かの誰かの飼い猫の記憶

風邪ひきました。

つらみ。



「みーちゃんおいで」


 私を呼ぶ声がする。

 私は気になっていたネズミのおもちゃをほっぽりだしてその声の主の腕の中へ飛び込んだ。

 生まれた時からずっと嗅いできたいとおしい匂いに包まれながら幸せな時間を過ごすのが私の日常だった。


「蒼太! 猫にかまけてないで宿題でもしなさい」

「っ! 今やろうと思ったとこ!」


 だが別の声が愛しい人を叱り、私は地面に降ろされた。

 もっとその匂いに浸りたくて何度も甘えた声で鳴くが、彼は悲しそうな顔をすると「またあとでね」と言い残し部屋のドアを閉めた。

 これで何度目だろう。


 私は恨めしかった。

 私と愛しい人との仲を裂く存在が。

 あいつさえいなければ私はずっと彼と同じ時間を過ごせるのに。


 そんなある日、転機が訪れた。

 なんでも高齢になった私の健康診断をするらしい。

 そう言えば最近人の言葉がはっきりとわかるようになってきたからそのせいだろうか?

 なんにせよこれはチャンスだった。


 キャリーバックに入れられ家族全員で出かけたその道中、私はちょっとア(・)ク(・)セ(・)ル(・)を(・)押(・)し(・)、ハ(・)ン(・)ド(・)ル(・)を(・)横(・)に(・)切(・)っ(・)た(・)。

 その結果車は電柱にぶつかり大破、そして思惑通り前の席だけが綺麗に潰れた。

 彼も頭を打ち気を失ったが問題ない。

 私は壊れたキャリーケースから抜け出ると彼(・)の(・)体(・)の(・)中(・)に(・)入(・)っ(・)た(・)。

 私たちは一つになったのだ。


 1たす1が1になる。

 誰も引き裂くことのできない繋がり。

 そのはずだった。


「ちっ……一歩おそかったか」


 外に出た私を待ち構えていたのは銀色に光る日本刀を握った巫女服の少女だった。

 私たちの邪魔をするものは許さない。

 だが振るった一裂きはたやすく受け流されてしまう。


 「産まれたばかりの猫又が愛情と独占欲をはき違えたか」


 そいつはため息交じりに呟くと私の耳を切った。


「ぎにゃっ!?」


 そこは私の弱点だった。

 いくら一つになったとはいえそのイレギュラーな存在の差から一部「私」が露出してしまうのだ。

 そこを的確に狙ってきた。

 私は直感的に悟った。

 こいつはプロだ。と。


「前ばかり気にしてると背中を切られるぞ?」

「……!?」


 その言葉に思わず背後を見てしまう。

 それが命取りだった。


「切り取完了」

「あ……あぁ……」


 もう一か所の弱点であった尾が切られ私という存在が瓦解する。

 慈悲も何も無く作業的に私は殺された。


「じゃあ後処理は任せた。霧子」

「はーい! 了解ですっ! おねぇさま!」


 私は彼とずっと一緒に居たかっただけなのにどうしてみんな邪魔をするのだろう。

 ――――恨めしい。


「あれ……? この反応……まだ完全に消え去ってない……?」

「ん? まだ消えてる途中とかでしょ? それに適当に記憶いじっちゃえば出てこれないよ」

「それもそうですね。ちょちょいのちょいっと。後は救急車でも呼んでずらかりましょう」

「あぁ。いくか」


 猫には魂が9つある。

 しかしそれは同じ世界に存在はしない。

 だから再び彼と会うことはないだろう。

 しかしどれだけの時間がかかろうと私は辿りついて見せる。

 再び蒼太と何の変哲もない日常を過ごす為。

 そして私は彼の心に小さな楔を残して消えた。



皆も寒暖差には気を付けようね!

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