守人
なんで遅かったかって?
そりゃあ……ゴールデンだからよ。
「くぅっ……!」
地を揺らす斬撃を受け、センが吹き飛ぶ。
なんとか転がらずに踏ん張るが相対する二人の鬼と霧子に防戦一方であった。
服も体もボロボロで誰が見ても劣勢は明らかだ。
「案外耐えるわね」
「そう易々と消えてやるつもりは毛頭ないからのぉ……」
「でも分かってるんでしょ? 勝ち目はないって」
霧子は余裕を見せつけるように日本刀の切っ先をを下げる。
「貴女はそもそも力不足だしルルはお兄ちゃんがいないと大したことはできない。諦めて投降したら?」
霧子の言う事は正しかった。
センたちに勝ち目など微塵もない。
今も残った力を防御に回してるから生き延びられているだけにすぎない。
「……やだ!」
その時だった。ルルリエが立ち上がった。
「絶対やだ! こんなに楽しいを知っちゃったんだから消えたくないのだわ!」
そして目尻に涙を浮かべながら霧子を睨み付けた。
その目は決意に満ちていた。
「……しょうがない。あんまり乱暴はしたくなかったけど……やっちゃって!」
「「……!!」」
霧子が命令すると二人の鬼はそれぞれ反対の手に握った曲刀をルルリエとセンに向かって振りかぶられた。
「ルルッ!」
センがルルリエに覆いかぶさる。
もうだめか。
ルルリエは目を閉じここ数日の楽しかった記憶を瞼の下に浮かべた。
青色の空と白い雲、たくさんの品物が並んだお店、暖かな人と人とのふれあい。
白い箱の中で終るはずったルルリエにとってそれらはいままで憧れていた絵本の中の世界のようだった。
だから――――。
(もう少し居たかったな)
その未練を断ち切るように断頭台のギロチンは振り下ろされた。
ガキンッ
だが聞こえてきたのは肉を断ち切る鈍い音ではなく金属音のような甲高い音だった。
「間に……合った!」
「そーた……?」
恐る恐る目を開けるとそこには蒼太と思わしき獣人の姿があった。
身体の7割が獣の姿の蒼太はその両手に生やした爪ではるかに大きい曲刀を押しとどめていた。
「うおぉぉっ!」
そして体格差が明らかなのに尋常ならざる力でそれを押し返した。
たたらを踏んだ鬼たちは不確定分子の乱入に判断を迷う。
「何で……? その格好は……?」
「話すと長くなるから……まずはあいつをどうにかしないと」
僅かにできた猶予の中で話し切るのは少々厳しい。
蒼太は妹ということになっていた者を睨む。
だがその鬼の首魁、霧子は頭を抱えていた。
「あーもう……どうしてこうなるかなぁ……お姉様の封印が解かれるなんて……お姉さまに怒られちゃう……」
「ったく……黙って見てりゃややこしいことになってるわね」
「お姉さま!?」
ぶつぶつと呟いていたかと思うと空から2枚の小さな紙が落ちてきて人の姿に変化した。
背の小さな女の子と背の高い女性の二人組だ。
小さい方は普段着と言った感じだがもう一人の背の高い方は巫女服のようなものを纏っており只者ではなさそうな感じを醸し出している。
「お前たちは……っ!」
「あら? 記憶も戻ってる感じ?」
「ガァァ!」
「おっと」
蒼太が牙をむき出し、小さい方に噛み付こうとするが彼女はそれを難なくひらりと避けた。
「ちょっと大人しくして」
「ぬがっ!?」
そして避け際に蒼太の身体に付けた一枚の札を起動させると蒼太の動きを完全に止めた。
格の違いを見せつけられてもなお足掻こうとする蒼太にもう3枚ほど札を追加するとため息を一つつき、ルルリエとセンに向き直った。
「ま、このまま終わらせるのも可哀想だし私たちの正当性を証明するとともに退治されてもらおうか。妖怪諸君」
「わしらが妖怪だと……?」
それは特にセンにとっては聞き捨てならない言葉であった。
それらを退治する立場だったから。
だから噛み付くように言うが少女は一切訂正することなく「そう」と言う。
「拠り所を失った神は何を対価に存在する? それはもはや妖怪とさして変わらない存在じゃない?」
「それは……!」
センは言い返せなかった。
蒼太から生命力を吸って生きている身であったから。
そう思うと自分がみじめな存在がしてきてセンは下唇を噛む。
「じゃ、本題に戻ろうか。その男に憑いてる物との因縁を」
言葉が出ずに俯くセンを捨て置いて少女は話し始めた。
蒼太の歩んできた愛憎混じったこれまでの物語を。
色々やることやりたいことたくさんだけど眠いしじめじめしてるしなめくじ!




