↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

百合の1 出会い

第二部、本編スタートです。

「そこの女、治癒師か」


振り返ったら、馬に乗ったローブ姿の魔術師様がいた。

フードを深く被っているせいで顔が見えないけれど、

その人の手には、私がさっき配っていた無料券。


「はい、マルイ治癒所の治癒師です。お試しされますか?」

「……とりあえず頼みたい」

そう言って無料券を差し出したので、受け取ろうとビラに触れる。


ドクン!

っ、えっ、何?

胸の奥がギュッとなった。


ローブ姿の魔術師様が胸を抑える。

「…うっ」

「大丈夫ですか?」

「…いや……問題ない」


手綱が落ちて、馬が私の方に擦り寄って来たので、

そのまま手綱を持ってみたら馬がフンフンとしている。

お馬さんは大丈夫みたいだわ。


でも馬上の魔術師様は胸を押さえたまま馬に突っ伏してしまった。

これは急いだ方がいい。

馬を引きながら、治癒所へ急ぐ。


治癒所に戻ると、マルイ先生がすぐに見てくれた。

でもすぐに呼ばれた。


「ララ、この方はお前の治癒魔法の方が相性がいいかもしれない」

「え?私が?」

「見れば、わかるはずだ」

「わかりました」

「じゃあ、よろしく。わたしゃ、往診に行ってくるから、あとは頼んだよ」


先生が私に任せるなんて大丈夫かしら。

でも精一杯するわ。


「あの、魔術師様、これから治癒魔法を使いますが、お体に触れてもよろしいでしょうか」


「構わぬ…っ」


魔力の流れを確認するために手首をもつ。

ドクン!

うっ、まただ、何これ。


同時に、魔術師様もまた胸を抑える。

とにかく急いだほうがいい。


魔力の流れを見ながら、絶句した。

体の中でありえないことが起きている。


全身に光属性と瘴気が一緒に流れ、更に内臓の周りが爛れているのも感じた。

なぜ?これは外から来た魔獣の穢れではない。


魔術師様は、寝台に横になって目を閉じ、胸を押さえ、息も荒い。

銀髪が汗で額に張り付いている。

これは苦しいはず。


急いで浄化のポーションをタライにいれ、

リネンを絞って額にそっとのせる。

首周りや手など、服から出ている場所はポーションで拭き取る。


ここで使っているポーションは私のお手製。


そして無詠唱で浄化魔法をかけ、

体の中を巡る瘴気と古い光魔法も全て昇華させた。


しばらくして魔術師様は目を開く。


蒼金の瞳?


なんて綺麗なの、蒼色に金色が僅かに混じり合う。

一瞬も、二瞬も見惚れてしまった。


「お加減はいかがでしょうか」


「ああ、かなり楽になった」


「良かったです……あの」


「なんだ」


「まだ治癒は半分なのですが」


「……こんなに楽になっているのに?」


「瘴気と古い光魔力を昇華しただけです。大変言いにくいのですが」


「なんだ、さっさと言え」


「はい、内臓の周りが何かの魔法の影響で爛れています。かなり痛みがお辛いと思います」


「……っ、それを治せると言うのか?」


「全て、とはお約束できませんが、緩和させることは可能です。あとはポーションをお渡しできます」


「あぁ、ここのポーションは特産品であったな」


「はい、百合と蘭の生産地ならではの薬効が高いポーションです」


「では帰りに買おう」


「いえ、こちらでお渡しします。まだ希少なので、ポーション専門店には置いていません」


「金はいくらでも出そう」


「いいえ、無料券をお持ちなので、全部無料です」


「は?これだけの治療をして無料?」


「はい、ここはクレサール家の直営なので、新規の方は無料で」


「いや、さっき言っていた無料券とはなんだ」


「えっ?さっき持っておられましたよ」


「……ここの地図が書いてあったビラか?」


「はい、あれお試し無料券です」


「……そうだったか」

無料券なのご存知なかったのかしら?


「それより、内臓の治療をさせていただけますか」


「よかろう、頼む」


「では、お召し物を脱いでこちらのガウンに」


「着替え……」


もしかして、この方、貴族だわ。

「あの、お着替えお手伝いしましょうか」


「……頼む」

やっぱりね、なんか偉そうだし、でも紳士。


シャツを脱いで、ガウンを着せ掛ける時にそれはあった。

背中の真ん中に小さな傷が二つ。


「失礼いたします。ここは痛みませんか」


「どこが?」


「この背中の骨の間に、ここ」


ドクン!

「っ」


「あ、ごめんなさい、痛かったですね」


「いや、生まれた時からの痣で、いつもは痛くない」


「そうなんですね」

珍しい痣。でもそれよりも治療よ、ララ!


私特製のオーキドポーションを飲んでもらって、

背中に手をあてる。


無詠唱で魔法陣が立ち上がる。


全身を覆うように、純白のベールが現れ、

極薄い紫が混じった銀粉が周りを舞い散る。


「できる範囲でいいので大きく息を吸ってください」


「スーーッ」


「思いっきり息を吐いて、吐いて」


「フーーーーッ」


《身を焦がし吹き荒れる黄金の風よ、

この者を癒したもう、御身の御前に安らかに》 


しばらく魔法陣が回っていたけれど、

銀の粉が消えて、魔法陣も霧散した。


「はい!いかがですか?かなりマシになったかと」


「そなた、今なんと言った?」


「マシになったか?」


「その前だ」


「いかがで……」


「その前だ」


「……息を吐いてください、でした?」


「その次」


「えっ?いかがですか?ですよ、魔術師様、大丈夫ですか」


「もう良い、しかし、これほど楽になったのは初めてだ」


「良かったです、じゃあ、ポーションお渡ししますね、えっと、王都の方なら、きっともう来れないですよね?」


「なぜだ」


「まあまあ距離があるので」


「早馬なら一日だろう」


「そうですけど、でも多めにお渡ししておきます、ただ」


「金か」


「お金じゃありません!このポーションだけはご内密に」


「怪しい痛み止めか」


「違います!もう!私の特製で数が量産できないので、重症の方にだけお渡ししているのです。なので宣伝してしまうと、クレサールのお花が全て狙われてしまいます」


「……わかった、口外しないと約束しよう」


「ありがとうございます、ではこれ、10日分あります。毎日就寝前にお飲みください」


「礼を言う、世話になった」


「あ、待ってください。今から王都まで駆けられるのですか」


「そうだが」


「では、これ、お馬さんに。動物用のポーションも効き目あります。それと、怪しくないです」


魔術師様がふっと笑った。

「わかった、かたじけない」


「お気をつけて」


そして魔術師様は王都へ向かって颯爽と駆けて行った。

あれだけ重症だったのに、大丈夫かな。


でも、あの人の瞳、なんだか吸い込まれそうだった。

またいらっしゃるかしら?


読んでいただきありがとうございます。


週に2回くらいの投稿、《水曜・日曜》を午前9時ごろ、を予定しております。

これからもよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。