5. エピローグ
かつて、六代魔王『オダノブ』は最強の魔王だった。
魔王軍を使役して容赦なく周囲を攻め入り、大陸の大半を手中に収めかけた傑物。
その名を聞くだけで子供は泣き、兵士は震え、皆が眠れぬ夜を過ごしたという。
セトウチもまた常にその脅威にさらされていた。
海をムラカミが、陸をモーリが守護する。
この二人の英雄がいなければセトウチはとうに魔王の版図に飲み込まれていただろう。
特に陸での戦いは凄まじかった。
オダノブの魔王軍は幾度となくセトウチに攻め入ったが、そのたびにモーリが鉄壁の防御で押し返した。
攻め手の天才であるオダノブと、守り手の天才であるモーリ。
両者の戦いは長きにわたり一進一退を繰り返した。
しかし、血も涙もない魔王は正攻法での突破を諦めると別の手を打った。
――暗殺者。
モーリの居城に幾度となく放たれた刺客はモーリの一族を少しずつ、確実に削っていった。
それでもモーリは戦い続けた。
一族が潰えるその日まで、セトウチの盾であり続けたのだ。
そんな恐るべき魔王を封印した者がいる。
その名を――勇者アケチという。
アケチはオダノブが居城とする神殿に正々堂々と討ち入った。
燃え盛る神殿の中での一騎討ち。
炎の中で剣を交え、そして見事に六代魔王オダノブを封印してのけたのだ。
オダノブが封印された後のセトウチには平和が訪れた。
海は穏やかに凪ぎ、島々は静かに繁栄を取り戻していった。
しかし。
その平和はある日、終わることになる。
魔王を封印した勇者アケチが討たれたのだ。
アケチを討った者はその場で自らを魔王と名乗ったのだ。
七代魔王『トミヒデ』。
トミヒデはセトウチの方角を指差し、こう言った。
「海が欲しいな。あの美しい海が」




