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護国の英雄ケサランパサラン  作者: 敵機直上急降下


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戦術の見直し

戦術の見直し


 必勝を期して臨んだマリアナでの決戦敗北で、陸海軍は衝撃を受けていた。

 この決戦のために時間を稼ぎ、強固な水際陣地を構築し、航空機を温存して万全と言っても過言ではない態勢で臨んだにもかかわらず、敗北したのである。


 強固なはずの水際陣地は戦艦の艦砲射撃により粉砕され、1000機を超える航空攻撃は電探に誘導された米直掩機に的確に迎撃され、それでも十分な戦力であるはずの艦上爆撃機と艦上攻撃機は米艦隊の強力な対空砲火の前に磨り減っていき、敵艦隊撃滅どころか撃退にすらならなかった。

 これまでの日本軍の戦術が、物量と電探技術に勝るアメリカ軍を相手に、既に通用しなくなっていると考えられた。


 陸海軍ともに水際撃滅主義が主流であったが、磐石と思えたサイパン島の強固な水際陣地が短時間で破壊された事で、水際作戦は物量に勝る米軍に対して時間稼ぎにもならないことが分かり、陸海軍揃って縦深防御への方針の大転換が行われた。

 次の米軍の目標となるであろうパラオ、フィリピン、硫黄島などは縦深防御の方針の下、急ぎ地下陣地などの構築が進められた。台湾や沖縄を始めとする本土においても、縦深防御に基づく防衛陣地構築が行われることになった。


 硫黄島の地下陣地を造るに当たっては、高温や火山ガスが陣地構築の妨げになっていた。そこで、火毛玉で周囲の温度を下げ、風毛玉で坑道内の火山ガスを外へ排出し換気を行うことで、陣地構築の障害を排除した。

 また、水毛玉が豊富に飲料水を供給することで、硫黄島の陣地構築が多いに進むことになった。


 海軍でも火毛玉、水毛玉、風毛玉の活用が試みられ、水上機搭載潜水艦と小型空母で良好な結果を出していた。

 火毛玉と水毛玉は、水上機搭載伊号潜水艦に水上機1機分の替わりに搭載し、二酸化炭素吸着剤使用後の高温を適温に下げ、艦内の空気から水を作り出し湿度を下げ環境を改善することで、長時間の潜航を容易にすることができた。

 そして風毛玉は、空母の船首側格納庫上部に配置し、甲板上で高速機の発艦に必要十分な風力を生み出せた。例えるなら空母前方に直径数十mの巨大な扇風機を設置するような状態で、小型空母でも翼面荷重の高い高速な艦上機の発艦が可能なことが分かった。



 現在の日本軍による航空攻撃は、電探管制による的確な迎撃を行う米直掩機や、対空戦闘能力の高い米艦隊を相手にするに当たり、現状の戦力ではまともに打ち破れないと判断された。

 熟練搭乗員の不足、戦闘機の性能不足、航空機の生産能力の差などもあり、戦術の見直しや新型艦上戦闘機の投入が急がれることになった。


 米機動部隊の艦載機は、マリアナ諸島攻撃により光毛玉によって少なくない損害を出していたはずであった。しかし、攻撃隊を迎撃した直掩機や日本機動部隊へ向けられた攻撃隊の数をを見るに、米機動部隊は後方から艦載機の補充を受けていると考えられた。

 米機動部隊は一定水準の搭乗員と航空機を、不足なく供給され続けられる状態にあったと推測でき、あらためてその桁違いの物量を再認識させられるのであった。


 物量に関してはどうあがいても覆らない。海軍では性能に劣る艦上戦闘機の後継機開発を急ぎつつ、差し当たっての繋ぎとして局地戦闘機紫電改を艦上機化して凌ぐことにした。

 新型艦上戦闘機を開発している三菱へは、優先的に資材を回し一刻も早い完成を促した。もっとも、開発が遅れたそもそもの原因は、海軍が誉エンジンに拘り、ハ43エンジン採用が遅くなったためであった。



 マリアナ諸島で抵抗を続けている部隊への補給のため、米潜水艦などが用いる対水上電探を想定した輸送船の検証を行っていたところ、木造戦時標準船が対水上電探で探知し難いことが判明し、闇毛玉を搭載し前線への補給に用いられることになった。

 トン数が小さいため一度に運搬できる物資の量は少ないが、対水上電探に探知され難いという特長を活かし、前線の部隊へ補給を行っていった。


 闇毛玉の運用も見直され、昼間の輸送船隠蔽に主に使われるようになった。その分闇毛玉の数に余裕ができ、多くの艦船に配分できた。

 夜間に警戒すべき米潜水艦は対水上電探を用いる攻撃が主体であるため、夜間は闇毛玉で隠蔽を行うよりも水上偵察機瑞雲などが対潜哨戒を行い、輸送船は電探の電波を探知したらこれまで同様ただちに回避行動を行う方針にした。


 ちなみに、木造船が電探に探知され難いことから、開発中の木製九九式艦上爆撃機が有用なのではないかと注目された。

 しかし、木製航空機製作に必要な接着剤が確保できない事や、空母への離着艦を想定した強度で開発されておらず、空母での運用を行う機体とする場合さらなる開発期間が必要と考えられ、電探対策の機体としては断念された。



 1944年6月より、中国大陸からB-29爆撃機が飛来するようになった。

 高度1万mを飛行できる爆撃機であるため、高射砲では砲弾が届かず、迎撃できる航空機も限られ、主に光毛玉が迎撃を行っていた。光線をB-29に照射できれば確実に撃墜することができた。しかし、雲や霧などで視界が遮られると光毛玉は目標を狙うことができなかった。


 遠からずマリアナ諸島の飛行場からもB-29が飛来することは分かっていたので、いっそうの光毛玉の配備と、高度1万mの高高度で迎撃戦闘ができる戦闘機の配備を進め、天候不良時でもB-29の跳梁を許さない体制が作られていった。

 とはいえ、快晴であれば光毛玉の迎撃でB-29は撃墜可能であるし、そもそも高度1万mの高高度爆撃や天候不良時の爆撃は、B-29の命中率が著しく低くなり、重要目標への被害は限定的だった。



 日本軍は米軍に対し効果の薄い水際作戦を縦深防御へと改め、毛玉の力を活用しさらなる時間を稼ぎ、次の決戦へ向け着々と準備を進めるのだった。

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