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護国の英雄ケサランパサラン  作者: 敵機直上急降下


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毛玉の有効活用

毛玉の有効活用


 1942年8月、ソロモン諸島ではガダルカナル島を巡る戦いが開始された。

 日本軍は戦力の逐次投入となり、補給が滞り、消耗戦となっていた。


 陸軍は米潜水艦や航空機による輸送船の損失を抑えるため、独自の輸送船防衛策を講じていった。

 その一つが闇毛玉の活用であった。


 闇毛玉は、姿を消したり一瞬存在を忘れさせたりするという特異な生物であり、巨大な闇毛玉はその特異な能力も当然高く、輸送船を見えなくしたり、数瞬だが輸送船の存在を忘却させることもできた。

 しかし、見えなくなった輸送船同士もお互いに見えなくなるという不具合があったため、その調整に時間が掛かっていた。


 ガダルカナル島を巡る戦いが続く中、同島の兵士達の飲料水の供給を目的とした、水毛玉の派遣が行われた。虫さえ与えれば大量の水を供給できる水毛玉は、ガダルカナルの密林で戦う兵士達を大いに助けることになった。同様に他のソロモン諸島の島嶼やニューギニア方面へも水毛玉は送られた。

 毛玉は巨大になっても軽く、運用する兵士が抱えて移動するのは容易であった。


 1942年も暮れる頃、闇毛玉を運用する兵士達はコツを掴み、輸送船の姿を消しつつもお互いが見えるようになっていった。

 ところが1942年12月末に御前会議でガダルカナル島からの撤退が決定し、闇毛玉を用いた輸送船によるガダルカナルへの補給という目的は果たせなくなった。


 しかし、闇毛玉を用いたガダルカナル島からの撤退が行われると共に、ソロモン諸島やニューギニア方面への補給も行われていった。

 米航空機から隠れられ、潜水艦の潜望鏡からも確認できない輸送船は、前線の兵士達へ食料や医薬品、武器や弾薬などの補給物資を届けていった。


 闇毛玉を乗せた輸送船の前線での積み下ろしは、連合国軍に気取られぬよう昼間は闇毛玉で姿を消し、積み下ろしは夜間に行われた。

 航行中と昼間の停泊中は常に闇毛玉で姿を隠し、制空権と制海権を失った島嶼を撤退の時まで支え続けた。


 闇毛玉で姿を消している船舶は、煙突からの排煙や航跡すら隠蔽できたが、電波は反射した。つまり電波探信儀の電波で捉えられたのである。

 対水上電探を用いられれば捉えられることが分かっていたので、闇毛玉で姿を消していても警戒は怠らず行動していた。


 ソロモン諸島でアメリカの物量に押される中、アリューシャン列島アッツ島へのアメリカ軍による上陸作戦が始まった。

 戦力差は圧倒的で多勢に無勢であったが守備隊は奮闘し、米上陸部隊を押し留めいた。


 しかし、大本営でアッツ島の放棄が決定し、増援ではなく闇毛玉で姿を消した輸送船による救援が送られ、残存するアッツ島守備隊を回収し帰還した。

 残るキスカ島からは米軍との戦闘前に同様の撤退が行われ、無事撤収に成功したのだった。


 活躍目覚しい闇毛玉であるが、単純に輸送船の姿を消すだけの闇毛玉ならある程度確保できるが、無線封止状態で姿を消した船舶同士が衝突する可能性がが拭いきれず、姿を消した船舶同士が確認できるようになるまでは運用できなかった。

 そのため全ての輸送船に割り当てることはできず、必要な数には満たなかった。


 海軍は闇毛玉の有用性に着目するも調教に時間が掛かるため、陸軍に輸送船で運用している兵士と闇毛玉の出向を求めた。米艦隊との決戦に用いるためである。

 当然陸軍は拒否し、むしろ海軍も闇毛玉を育成調教し輸送船を守るべきではないかと返した。


 闇毛玉は主に前線への補給を行う輸送船に回されており、後方の輸送船は通常通りであったため、闇毛玉を用いた輸送船よりも損害が出ていた。

 陸海軍とも闇毛玉以外の対策も講じていたが効果は芳しくなく、陸海軍とも闇毛玉の育成調教を強化し、海軍は海上護衛総司令部を設置し海上通商路の防衛を模索していった。また、油槽船に関しては石油が枯渇するとどうにもならなくなるため、闇毛玉が優先的に回されていた。


 闇毛玉は運用する兵士が休む必要があったため、輸送船には単体ではなく複数必要だった。

 それもまた数が足りない理由になっていた。


 海軍は海戦に使えないかと考えていたが、闇毛玉を活用しても電探には捉えられ、砲撃や魚雷の発射で隠蔽は解除され、空母艦載機を格納庫から甲板へ上げたり短艇や積荷を降ろしたりしても隠蔽は解除された。

 海軍が海戦に使うとしたら、奇襲的な一撃を加えるという限定的なものになると考えられた。


 海軍では光毛玉も海戦に活用できないか検討していたが、艦載は断念していた。

 光毛玉を艦上で探照灯のように使う事は可能だったが、数秒間しか照射できない光線では、動揺する艦上では照準が間に合わなかったのである。


 では航空機に搭載できないかと検討されたが、光線を照射すれば風防を貫通溶解するし、かといって風防がなければ風圧で極めて脆弱な光毛玉が潰れてしまう。そもそも巨大な光毛玉を載せることができるのは飛行艇程の大きさがなければならず、実際に運用するとしたら光毛玉専用機として開発する必要があると考えられた。

 非常に脆弱な光毛玉に配慮した専用機を製作するよりも、光毛玉は地上で運用した方が良いと結論付けられた。


 光毛玉の航空機搭載は断念されたが、闇毛玉に関しては航空機への搭載が実現しそうであった。

 二式飛行艇を闇毛玉搭載を前提に改良し、偵察と輸送任務を行う機体として試作が進んでいたのである。


 他の火・風・土毛玉の内、火毛玉は温度を下げられることから南方で活用され、風毛玉は施設内の特定の座標から空気を外へ出すことができたので、換気の役割が与えられた。

 土毛玉は金属の抽出で活用され、主に鉄の含有量の低い満州産の鉄鉱石から純粋な鉄を取り出す任務に就いていた。

 アメリカの鉄くず輸入に頼ってきた日本にとって、土毛玉の金属精製能力はとても重要なものとなっていた。


 また、巨大な土毛玉は広範囲の土壌から特定の金属を抽出できることから、鉱脈探索にも活用された。そして当然金属を抽出できることから、貴金属の金も抽出でき、もし関東大震災後からこの能力を活用できていたら、その後の不況や恐慌は起きていない可能性があり、日本は戦争などしていなかったという公算が高かった。

 今更な話であり、悔やんでも仕方がないことではあるが、土毛玉の有用性が示されていけばいくほど考えずにはいられないことでもあったのである。

お読みいただきありがとうございます

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