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護国の英雄ケサランパサラン  作者: 敵機直上急降下


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軍用動物毛玉

軍用動物毛玉


 満州特需に伴う毛玉研究の加速によって、毛玉の軍用動物としての可能性が示されていった。

 そして毛玉はその性質ごとに分類された。


 火毛玉。赤みがかった白い毛玉で、火を出すことから名付けられていた。研究により温度変化の力を持つことも判明した。

 単純に火の力としては、火炎放射器のようなことができ、その火力は八九式中戦車に使われる17mm鋼板をも容易に溶かした。しかし、射程が短くその力を持つ毛玉は巨大であり格好の的になるため、威力は高いが実戦向きではなかった。さらなる調教と訓練で火炎放射を収束させていければ、射程と威力の向上が見込めるのだが、現在の火炎放射の射程が200m程度なので、大砲ほどの射程を得ることはできないと考えられた。もちろん反撃を考慮しなければ、火炎放射器としては破格の性能であるのは確かだった。


 水毛玉。青みがかった白い毛玉で、水を出すことから名付けられた。研究により、周囲の水分を水に変えていることが判明した。毛玉の寸法が大きくなるにつれて、水分を取り出す範囲は拡大していっていることが判った。取り出された水は清潔で飲用可能だった。

 巨大な水毛玉は大量の水を出すことができ、それを瞬間的に出そうとすれば高圧の水鉄砲となり、戦車に使われる17mm鋼板を容易く切り裂くことができた。しかし射程は短く毛玉も巨大なため、実戦向きではなかった。


 風毛玉。緑がかった白い毛玉で、風を出すことから名付けられた。小さいうちは狭い範囲の空気を出していたが、巨大になると広範囲から空気を集めることができ、任意の場所から取り出せると確認された。また大きくなるにつれ吐き出す空気の量も増えていった。

 巨大な風毛玉は竜巻を発生させたり、爆風のような衝撃波を生み出したり、カマイタチのように風の刃を出すこともできた。しかし、やはり射程が短く毛玉が巨大になるため、実戦向きとはいえなかった。


 土毛玉。茶色がかった白い毛玉で、砂や石、土などを出すことから五行にもちなんで名付けられた。周囲の土壌から砂や土などを呼び出せた。研究が進むにつれ金属も出せたことから、将来的には調教次第で希少金属を選択的に抽出できるのではないかと期待されている。

 巨大な土毛玉は岩を砲弾のように打ち出せ、戦車に使われる17mm鋼板をひしゃげさせることができた。しかし、榴弾のような殺傷能力も徹甲弾のような貫徹力もなく、なにより射程が砲弾のように長くなく、実戦向きではなかった。


 光毛玉。真っ白い毛玉で、光を出していたため名付けられた。強い光は数秒しか出せないが、弱い光は長時間出せた。

 巨大になると光は強烈になり、収束させると光線となって戦車に使われる17mm鋼板に穴を空けることができた。実験により数十キロ離れた距離でも鋼板に穴を空けることが可能であると判明した。動いている戦車に穴を空けるのは難しそうではあるが、遠距離で静止している戦車へ命中させ、光線の熱で内部を焼くことは可能と考えられた。試せてはいないが、航空機に対して有効な攻撃手段になるのではないかとも考えられている。


 闇毛玉。目に見える何かを出すわけでもなく、一時的に姿を消し隠れてしまう性質から、光が当たらない、光の不在として、光の対義語である闇の文字が当てられ、闇毛玉と名付けられた。

 調教された闇毛玉は自分以外も見えなくすることができ、調教された大きな闇毛玉は自分以外の存在も数瞬だが他者の記憶から消すことができた。まだ試されていないが、巨大な闇毛玉は船舶ほどの大きな物も見えなくしたり、数瞬だけ他者の記憶から消えられるのではないかと考えられている。


 これら研究成果を見た陸軍は驚愕すると共に困惑したが、ただちに毛玉に関する研究を極秘扱いとし、軍用動物としての研究をよりいっそう進めていった。

 また、毛玉の巣に関しても軍が立入を制限し、毛玉を研究・育成・調教する者以外の立入を禁じた。


 陸軍が特に注目したのはやはり光毛玉であった。

 実際に数十キロ先の目標である17mm厚の鋼板に、見事に命中させ穴を空けられることが確認されたからである。


 光毛玉が数十キロ先を見えているのか、はたまた感知しているのか、目に相当する器官を持たない毛玉の生態はまだまだ謎であったが、数十km先の目標に命中させたのは事実であった。

 そしてさらに不思議なのが、超高温の光線を照射しているのにもかかわらず、巨大光毛玉周囲は人が耐えられる程度の高温で済んでいたのである。それは火毛玉の火炎放射も同様で、毛玉自身を守る何かしらの仕組みがあると考えられた。


 ただ、軍用動物なので運用の難しさもあった。狙撃を行わせようにも指示をちゃんと理解できているのか疑わしく、当ててはいけない目標に誤射してしまう可能性は捨てきれず、その性能に反して本格採用には二の足を踏んでいた。

 巨大光毛玉を餌付けし育成調教した者によれば、何となく毛玉の考えが分かるとのことで、分かりやすい目標であれば誤射の心配はないという。


 陸軍は巨大光毛玉を軍用動物として採用したものの、誤射の懸念が拭えず、慎重に実験・演習が行われていった。

 これにより、餌付けしている者の指示には従うことが分かり、毛玉の考えがなんとなく分かるようになるまでには相応に時間が掛かることも分かった。


 また、毛玉の寿命の問題もあった。せっかく育成調教した毛玉も、寿命がくれば消えてしまうのだった。

 小さい毛玉で一年。大な毛玉で数年程度が寿命であった。大きくなる程寿命は伸びるため、試されてはいないが、鯨ほどの超巨大な毛玉になれば、かなり長生きできるのではとも考えられた。



 陸軍が軍用動物として光毛玉は実戦に耐えうると判断した頃、中国大陸では北支事変と第二次上海事変が発生し、実験的に光毛玉を試す機会が訪れた。

 光毛玉は隠蔽されながら大陸に移送され、国民党軍の陸軍や空軍に対して実戦試験が行われた。


 結果として、対空兵器としての運用が極めて理にかなっていることが分かった。

 地上目標へ対する攻撃は有効ではあったが、目標の選定照準の困難さ、敵へ与える損害を考えた場合、航空機を撃墜した方がもっとも効果的と考えられたからである。


 一回の光線照射で確実に一機撃墜する性能は、これまでの高射砲の常識では考えられないことだった。

 そしてその対価は、小さな虫一匹の生餌だった。


 陸軍は光毛玉を高性能な高射砲と位置付け、本土防空の高射砲の一つとして導入を開始した。

 そして毛玉研究の予算は増額され、巨大光毛玉の運用要員確保とそれにあわせた光毛玉育成調教が決定した。


 やがて国内の巨大光毛玉は数を増やしていき、本土防空の切り札と言って良い存在となっていったのであった。

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