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護国の英雄ケサランパサラン  作者: 敵機直上急降下


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毛玉の巣

毛玉の巣


 1923年9月。関東地方を襲った巨大地震は、甚大な被害をもたらした。

 被災後すぐに復興が始まる中、震災前にはなかった洞窟が発見された。


 発見された洞窟の中はほんのりと薄暗く、白っぽい毛玉がそこかしこに見られた。

 両の手の平で包めるぐらいの大きさの毛玉であり、タンポポの綿毛を大きくしたような見た目であった。風もないのにひとりでに動いていたため伝え聞く妖怪のケサランパサランのように思われた。


 発見者は毛玉を捕まえようとしたが、「ポッ」という半濁音と共に小さな火を吹いたため、捕獲は断念し、洞窟ができた事とそこが奇妙な毛玉の巣になっている事を役場に報告した。役場は洞窟を封鎖し、調査が終わるまで立入禁止とした。

 しかし震災直後であり復興が優先されたため、しばらく調査は行われず、ある程度落ち着いた頃にようやく珍しい生物の巣があると、大学の学者達に伝えられたのだった。


 生物学や博物学などの学者達が調査を行ったところ、新種の生物だと確認された。

 ほんのり薄暗い洞窟自体も不思議な空間だったが、そちらは後回しにされ、まずは毛玉の調査が行われた。


 見た目が伝承のケサランパサランのようであったため、餌と言われている白粉を与えてみたのだが、毛玉達には見向きもされなかった。

 よって名前はケサランパサランではなく、単純に毛玉と呼ばれるようになった。


 初回の調査により、毛玉は6種類いることが分かった。どの種類も一見白色であり、よく観察することで見分けることができた。

 赤みがかった白い個体は小さな火を出し、青みがかった白い個体は水を、緑がかった白い個体は風を、茶色がかった白い個体は砂を、灰色がかった白い個体は姿を消し、真っ白い個体は光を出した。


 毛玉はどの個体も科学的に説明し難い現象を起こしたのである。

 この特異な生物に学者達の好奇心は大いに刺激されたのだった。

 

 学者達は毛玉

を持ち帰り研究しようとしたが、持ち出した翌日には忽然と消えてしまうため、毛玉研究は容易ではなかった。当然標本も作れなかったのである。


 この容易ではない毛玉研究に追い討ちをかけるように、震災恐慌や昭和金融恐慌、そして世界恐慌から続く昭和恐慌など立て続けに日本経済は不況に喘ぎ、大学の研究費は削られるばかりだった。それに伴い、ほんのりと薄暗い洞窟自体の調査は忘れ去られてしまったのである。

 毛玉研究を行う学者達は、細々と毛玉の調査研究を行うのが精一杯であった。


 それでも毛玉について判明していった事は多数あった。

 まず餌付けが可能な事。毛玉は生餌しか食べない事。生餌は小さな虫や小魚でよい事。一日一回生餌を与えれば、洞窟の外でも消えない事。大きい生餌を与えれば、毛玉がそれに合わせ成長し大きくなる事。大きくなった毛玉は小さな生餌に戻しても問題ない事。徐々に大きな寸法の生餌を与えていけば、毛玉はどんどん大きくなる事などが判明していったのである。


 毛玉には口などはないが、生餌を毛玉に近付けると毛玉の中に取り込んでいった。

 大きな生餌を与えた後に大きくなった毛玉の重量を量っても、何故か生餌の重さは加算されておらず軽いままであった。


 そして寸法が大きくなっていった毛玉は、大きくなるにつれて火や水などの放出するものが強く大きくなっていった。姿を消す毛玉は、消える時間が延びていた。

 また、それら放出されるものは収束させることでさらに強力になっていった。消える毛玉は、一瞬だがその存在を忘れてしまうという現象が起きた。


 細々と続けられてきた毛玉研究の状況が変わったのは、満州事変からであった。


 軍部が長らく続く不況打破のため、中国東北部・満州に権益確保のため軍を動かし満州国を建国したのである。

 この満州事変による満州特需により、軍事目的の研究に予算が付きやすくなり、学者達は毛玉の軍用動物としての可能性を模索し、研究予算の獲得のために奔走し、さらなる毛玉研究を進めることになっていった。


 毛玉研究の予算が増加し、研究は大いに進んでいった。

 生餌として様々な野生動物や海洋生物が試され、直径2mを超える巨大な毛玉を生み出すことに成功した。巨大になった毛玉でも、それを維持する生餌は小さな虫で事足りた。


 火や水を連続で出す場合は、小さいものでよいので新たに生餌を与える必要があった。

 巨大になった毛玉の放出するものは強烈で、調教次第では軍事利用も可能ではないかと考えられたのだった。

お読みいただきありがとうございます

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