確信の植木鉢
「ア、アクア、キャ……? はぁ?」
見たことも聞いたこともないダンジョン名だ。
なに言ってんだ、この子?
俺が首を傾げると、咲は涙を浮かべた。
「と、とぼけないで! あなたが使ってる植木鉢は、あたしの両親がお姉ちゃんにプレゼントしたものよ! 猫のレリーフの傷だって、そっくりそのまま同じだもの! ねえ、あの鉢はどこで手に入れたの!? アクアキャットパラダイスをどうしたの!?」
俺はハッとした。
ま、まさか、あの夜にゴミ捨て場で拾ったダンジョンスプラウト。
あの鉢に入っていた死にかけてた個体が、この子の言ってるアクアキャットパラダイスなんじゃ……?
咲は、顔を覆ってシクシクと泣き始めた。
ヤバい。
泣かせてしまった。
「お、俺、なんか甘い飲み物を買ってくるよ! 落ち着いて話がしたいから、それを飲みながらゆっくり……ね?」
咲は泣きながら、小さく首を縦に振った。
外に出ると、扉の近くにいた女性が不安そうな顔でこちらを見る。
俺は大丈夫だとアピールするように頷いてから、廊下に置いてある自販機を指さして買いに行った。
すぐに戻るのも気まずくて、たっぷり時間を使って温かいミルクティーと微糖の缶コーヒーを買う。
部屋へ帰ると咲は、少し落ち着きを取り戻していた。
彼女の前にミルクティーを置いてやる。
「……ありがとうございます」
咲はグズグズ言いながら二口ほど飲んで、涙を拭いた。
俺はタイミングを見計らい、口を開いた。
「ええと、咲ちゃん。実はあの植木鉢はね、ゴミ捨て場で拾ったものなんだ」
「ゴミ捨て場で……? なんで! そんな所に!?」
「それは、こっちが聞きたいな。大切なはずの植木鉢が、なぜゴミ捨て場にあったんだい? 君のお姉さんは、もらったプレゼントを捨ててしまうような人なのかな?」
ちょっと意地の悪い聞き方をする。
咲はグッと言葉につまり、それから口を開いた。
「ど、どうしてゴミ捨て場にあったかは、あたしにはわかりません。あたしが知ってるのは、お姉ちゃんがダンジョンスプラウトをものすごく大事にしてたってことだけ。アクアキャットパラダイスは、お姉ちゃんの宝物だった……そう。あの日まで、ずっと」




