謎の少女X
ダンジョン名:サービス残業お断りダンジョン
レベル:22
経験値:67580
属性:冥
冒険ログ:39
状態:健康を維持しています。
大会で入賞を狙える最低レベルは25と言われている。
ちなみにギネスに登録されてる世界最高レベルのダンジョンスプラウトは、レベル32だ。
これは剪定なしで、ひたすら最高レベルを追求した値である。
剛のダンジョンはレベル28だったから、やはり日本屈指のダンジョンガーデナーであることは間違いない。
次の週である。
公民館に入ろうとする俺の元に、剛がやって来た。
「やあ、玄君。君の鉢植えにイタズラした子がいるんだって? コロちゃんがその子を連れてきたから、今から会ってほしいってさ」
「えっ、もう見つかったんですか!?」
剛の車で『マッスル・サンクチュアリ』へと行き、事務所に通される。
そこにはヤンキーモードのコロちゃんと、中学生らしき女の子がひとりいた。
女の子は二人掛けソファの奥に座り、手前にはコロちゃんが座っている。
コロちゃんが立ち上がり、俺にお辞儀すると言った。
「玄さん。ご命令通り、連れてきました。星見ヶ丘中学校三年生、アーチェリー部所属。名前は高野咲です」
してないっ!?
命令なんて、してない!
しかしなるほど、あのハードケースはアーチェリーの道具入れだったのか。
「あ、えっと、うん。……ご苦労さま」
一応、善意でやってくてることだしなぁ。
俺は曖昧にお礼を言うと、向かいのソファーに腰かけた。
よく見ると女の子の身体は小刻みにカタカタ震え、顔面蒼白で怯え切っている……。
まいったな。
これじゃ、まともな話はできなさそうだ。
俺はコロちゃんを手招きで部屋の隅まで呼び寄せると、咳払いをしてから言った。
「ねえ、コロちゃんさ。こないだ、通販で何か買ったでしょ? 荷物が届いてたよ」
「あ、すんません。マズかったっすか?」
「いや、大丈夫。受け取りしておいたから。それより、何を買ったの?」
「夏物のサマードレスです。タイムセールで安かったんで」
「ふうん。俺さ、コロちゃんの可愛い恰好見たいから、それに着替えてよ」
「えっ? ……今からすか?」
「そう、今。頼むよ」
「は、はあ。玄さんが言うなら、着替えてくるっす。あ、そうだ。玄さん、今日のレイドってまだっすか?」
「ああ。公民館に入る前に、剛さんと会ったからね」
「じゃ、オレ、家に寄ってダンジョンスプラウトを取ってきます。今日のレイドはオレとしましょう!」
「お、いいね。そろそろ『深水常之宮』をクリアしたい」
コロちゃんは部屋を出ると、足早に廊下を歩いて行った。
よし、と。次は剛だな。
同じように彼を呼び寄せ、声をひそめていった。
「剛さん。大の男が二人、女の子が一人ってのは、絵面的にマズいですよ。ここは俺に任せてください」
「それもそうだね。じゃ、僕は外でトレーニングしているよ」
さすが俺より大人なだけあって、話が早い。
剛は言葉を続ける。
「一応、受付の女性職員を扉の外に立たせておくから。何かあったら、すぐ踏み込むよう言っておく。決して間違いが起こらぬように……あるいは冤罪が起こらぬようにね」
「あ、ありがとうございます! それはマジで助かります」
さて、二人きりになった俺は、ソファに座って女の子、高野咲と向き合う。
「ええと、今日は来てくれてありがとね」
「きょ、『狂犬のコロ』にすごまれて、拒否できるわけないでしょ……」
コロちゃん、周りからそんな名で呼ばれてんのか。
「あのね、咲ちゃん。君は先週、俺のダンジョンスプラウトを持ち上げてたよね? アレ、どういうつもりかな?」
咲は何も答えない。
顔を下にうつむいている。
俺は、ちょっと語気を強めた。
「他人のダンジョンスプラウトを、許可なく触っちゃダメだ! 中のラビリミンにどんな影響が出るかわからないし、うっかり壊したら巨額の賠償を支払うことになるんだぞ。みんな知ってる常識だ!」
「そ、そんなこと、言われなくても知ってます! ……あたしの姉は、優秀なダンジョンガーデナーでした。全国大会に出場したこともあるんです」
「ええっ!? す、すごいじゃないか……。じゃあ、なおさら、なんで勝手に触ったんだ? お姉さんを見て、ダンジョンスプラウトの価値や大切さは、身に沁みてるはずだろう」
咲は顔を上げて、俺をキッと睨むと叫んだ。
「あ、あなたこそ、『アクアキャットパラダイス』をどこへやったの!? 返してよっ! あれは、お姉ちゃんの大切なダンジョンスプラウトなの!」




