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ミニチュア・ダンジョンスプラウト! 社畜の俺が死にかけ植物を育てたら、世にもレアな冥属性ダンジョンが生まれました  作者: 森月真冬


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逃げた不審者

「ふー、やれやれ……。ただいま」


 部屋に戻って荷物を置いて電気を点けて、『サービス残業お断りダンジョン』を見下ろす。

 出る前と同じだ。どうやら、何事もなかったようだ。

 栄養剤のメモリも、まだ十分に残っている。


 当たり前の光景だ。

 そんな当たり前に、俺は心底ほっとした。

 そう思ったところで、スマホが震えた。


 画面を見る。


『週明けの会議資料について。連休明けは朝から会議があります。始業前に資料は完成している状態が望ましいです。皆さん、休暇の残りを活用しましょう!』


 会社からのLINEだった。


「…………」


 俺は、そっとスマホを伏せた。

 こっちの当たり前は、あまり見たくなかった。




 次のレイド会が始まると、俺はひとまず鉢植えを置いて、理央のフリマスペースへと向かった。

 お土産のまだらみみのタマリ漬けを手渡すと、理央は思ったとおりに面白いと大喜びした。

 気分よく今日のレイド相手を探そうと、鉢植えのところへ戻ろうとして、背筋が凍った。


 誰かが、『サービス残業お断りダンジョン』の鉢植えを持ち上げている……。

 女の子だ。制服を着ている。


「おい、あんた! 何やってんだ!?」


 俺が大声を出すと、女の子は鉢植えを置いて、出入口へと足早に向かった。

 慌てて後を追いかけるが、少女の動きは素早くて、あっという間に公民館を出てしまう。


 とにもかくにも鉢植えの無事を確かめようと、俺は引き返す。

 と、コロちゃんが小走りで寄ってきた。


「ど、どうしたんですか、玄さん!」


「誰かが、俺の鉢植えを持ち上げてたんだ……うかつだったな」


 子供がダンジョンを壊したり、イタズラ目的で除草剤を流し込まれたりなんてニュースは、年に数回は聞く程度は起こっている。

 滅多にあるわけではないが、自分に起こらない確率でもない。

 コロちゃんは愕然(がくぜん)とした様子で言う。


「そ、そんな……。た、他人の鉢植えに許可なく触っちゃいけないのは、みんな知ってるルールなのに……!」


「クソ、いきなり大声をあげるんじゃなかった! こうして逃げられちまったし、驚いて鉢を落としてたかもしれない。そっと後ろから近づいて、手を捕まえるべきだった。……それにしてもあの子、何のために鉢を持ち上げてたんだ?」


 俺はダンジョンスプラウトを回転させてチェックするが、どこも壊れた様子はなかった。異物もない。

 回転させた拍子に、入口からラビリミンが一匹転がり出たが、すぐにテテテと走って戻る。

 元気そうだ。……ふう、無事か。


 コロちゃんが顎に手をやり、考え込むように言った。


「げ、玄さんの声で、ボクも振り向いてチラッと見ましたけど……あの子が着てたの、ボクが卒業した中学の制服でした。そ、それと、なんか大きな荷物を持ってましたよね?」


「えっ? ああ……そういえば。四角くて細長いハードケースを背負ってたな」


「きゅ、休日なのに制服を着てたってことは、たぶん部活でしょう。ハードケースは部活の道具入れかな……?」


 コロちゃんは少し考えてから、首を傾げる。


「お、大きさから考えて、ギターとかテニスラケットじゃないですね。文科系の部活なら、美術の画材とか……トランペットやフルート、サックスも小さめならギリギリ入りそうだし、吹奏楽部の楽器もありかな……運動靴とユニフォームだけなら、あんなケースは必要ないはず……陸上、バスケ、バレーは除外。し、竹刀や薙刀(なぎなた)は長さが足りない……ラクロスとホッケーは該当しそうかな?」


 ブツブツと自分の推理を呟くコロちゃんに、俺は驚く。


「すごいな、コロちゃん! 探偵みたいだ」


「えへへ。ち、ちえのわチワワのアニメ毎週見てますから」


 コロちゃんよ。それは一体、どんなアニメなんだい?

 言いたい言葉をゴクンと飲み込む。

 今はそんな場合じゃない。


「あっ……そ、そっか。あ、あの部活だ!」


 やがて何か思いついたのか、コロちゃんはポンと手を打った。

 それから、俺の方に向き直って真剣な顔で言う。


「げ、玄さん。さっきの子に、もう一度会いたいですか?」


「え? ああ、そりゃ会えるものなら、会いたいよ。どんなつもりで鉢植えを持ち上げたのか理由を聞きたいし、もしなんとなくで触ってたなら、説教のひとつもかまさねばならん」


「わ、わかりました。それじゃあ、この件はボクに任せてください。ち、近いうちにあの子を、玄さんの所に連れてきます」


「そんなことできるのかい? 中学校って最低でも三百人くらいいるし、大きな中学ともなればその倍はいる。一人で探すのは大変だぞ!」


「だ、大丈夫です! ボ、ボクが中学に行って声かければ、後輩二、三十人くらいすぐ集まりますから」


「あ、そう……。すごいね。それじゃ、コロちゃんに任せるよ」


 その後輩って、きっとみんなヤンキーなんだろうな。

 俺は言葉を飲み込んだ。

アニメ『ちえのわチワワ』

みんなが暮らすどうぶつの町で事件が起こる。

毎回、容疑者が2、3人まで絞り込まれるが、解決することなくアニメが終わる。

ちえのわチワワが容疑者の回もある。

犯人は視聴者の心次第であり、誰もが犯罪を起こす可能性があるというモヤモヤした不条理と謎を楽しむアニメ。

真実はいつも闇の中!


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― 新着の感想 ―
不条理と謎を楽しむアニメwww 波乱の予感が吹き飛んじゃいましたよ…
ふわふわしてそうなのに、なんてスッキリしないアニメなんだwww
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