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8/15

違和感


 翌朝目が覚めたらアシュレイ様がベッドの上で正座をしていた。

 いつもは朝食前になって目を擦りながら起きてくるから、今朝も遅くまで寝ているものだとばかり思っていたのに。


「おはようございます、アシュレイ様」

「うん。おはよう」


 なんだか元気がないな。

 カーテンの間から朝日が差し込んでいてとてもいい天気のようだ。なのにアシュレイ様はどんよりとしている。いや、違うな。どんよりと言うよりはがっかり? 反省? う〜ん、よく分からないけど元気がないのは確か。


「どうかしましたか?」

「……ラナ、ごめん」


 アシュレイ様はゆっくりと頭を下げていくと、額をシーツに圧しつけて両手をついた。これって土下座?


「別にいいんですよ、許したのはわたしですし。ガウディも怒らないと思いますよ」


 一緒に寝たことを謝っているようだけど、なんだかいつもと違う気がする。その違和感に意識が向く前に「ラナ!」とアシュレイ様が勢いよく顔をあげて大きな声を出した。


「ボクはラナのことが好きだから。これは本当だから!」

「それはありがとうございます。わたしもアシュレイ様のことが大好きですよ」


 よく分からないけど何かしら不安になったのだろう。安心させるようにアシュレイ様の頭をなでた。


「着替えて朝食の準備をしますね」


 アシュレイ様は「ボクも手伝う」と言って部屋を出ていく。扉を開けて一度振り返ると、「嫌いにならないでほしい」と真面目な顔で言われてしまった。

 あれ? なんだか違和感があるなと感じたけど「もちろんです」と笑顔で返す。


「嫌いになんてなりませんよ。今日の朝食はアシュレイ様が大好きな半熟目玉焼きにしましょうね」

「うん。ありがとうラナ」


 アシュレイ様が扉を閉めると、頭に乗っていたサラちゃんがいつの間にか胸元にひっついてブローチのふりをしていた。


「サラちゃんは何を食べるのかな?」


 キッチンで生野菜を差し出したらパクっと齧り付いた。そこでガウディが「おはようございます」と姿を見せる。続いて間を置かずに着替えを済ませたアシュレイ様がやってきた。

 ガウディは変わらないアシュレイ様の姿を見て一瞬がっかりしたけど、すぐにいつものガウディに戻った。

 やっぱりガウディは知っていてアシュレイ様をわたしの部屋にこさせたようだ。

 期待に応えられなくて申し訳ないけど、こればっかりはしょうがない。そのうち強制されてしまうのかな。わたしだって本当は呪いを解きたいのだけど……そろそろ本気で決断しないといけない。


 生野菜を食べているサラちゃんを見たアシュレイ様が「サラ……ちゃんはラナの魔力を食べるから餌は必要ないよ」と教えてくれた。

 へぇ、そうなんだ。でもサラちゃんはもぐもぐ食べている。


「食べるとお腹を壊したりするのでしょうか?」

「悪いものなら口にしないとは思うけど、どうだろうね。魔物だし大丈夫じゃないかな?」


 そうだね。サラちゃんはもともと野生の魔物だし、食べて駄目なものは自分で分かるのかもしれない。昨日は食事に興味を示したけどお肉は食べずに野菜を舐めただけだったし、思い返すとちゃんと理解している感じだ。


 アシュレイ様にお手伝いしてもらいながら朝食の準備をする。ガウディは席についてその様をじっと眺めいていて、生野菜を食べ終えたサラちゃんはわたしの胸に戻ってきた。


 目玉焼きとハムを軽く焼いて温めたパンに挟んだものと、生野菜と果物のジュースをテーブルに並べる。簡単だけどこれが朝ごはん。一人暮らしの時は硬いパンを食べるだけだったからわたしからすると豪勢だ。ガウディは三人前を食べる。

 アシュレイ様は中身が五歳児なので食べこぼしが多い。だからいつもどおり濡れ布巾を準備していたのに、今朝はこぼすことなく綺麗に食べていた。

 もしかして少しずつ成長してるのかなと期待する。でも見た目はまったく変わらない。単に慣れただけかな。

 なんとなくの違和感を覚えながら、わたし達はいつもの朝を終えた。


 洗濯をするためにガウディが盥に水をためてくれたので、石鹸を削り入れて溶かす。昨日濡れてしまった服を盥に入れて足踏みして汚れを落とすのだ。

 長いスカートをたくし上げ、裸足になって盥に入ろうとしたら「待って、ボクがやる!」と焦った様子のアシュレイ様が走ってきた。


「一緒にやりましょうね」


 アシュレイ様は洗濯も好きなようで、二人で泡だらけになってしまうこともある。わたしは盥に足をつけた。するとアシュレイ様は「ううっ」と不満気に下唇を噛む。


「ガウディは向こうに行ってろ!」

「私は護衛ですので目を離せません」


 急にどうしたのだろう。ガウディがわたし達を見守るのはいつものことなのに。

 アシュレイ様、なんだか怒っているみたい。ガウディが脱いでいた兜を装着した。


「こっちはいいから向こうを警戒して」


 わたしとガウディを交互に見たアシュレイ様は、ガウディの手を掴んで反対向きにすると、靴を脱いで盥に飛び込んだ。

 わたしに対する独占欲が増したのかな。一時的なことだとしても誰かに執着されるのは嬉しい。

 アシュレイ様が「サラちゃん、ラナを守ってね」と話しかける。ブローチになりすましていたサラちゃんはくわっと口を開いて欠伸をした。


 洗濯物を干したあとガウディに了承を得てから、様子のおかしなアシュレイ様をピクニックに誘う。すると嬉しそうに「行く!」と返事をしてくれた。うん、いつもの感じだ。様子がおかしいのは勘違いかな?

 大きなパンの塊とチーズ、水筒だけを鞄に詰めて、アシュレイ様と手を繋いで歌を歌いながら、周りが森に囲まれた近くの湖畔へと向かった。アシュレイ様の手には釣りの道具が握られている。


「今日はガウディに負けないから」


 餌の探し方から釣り道具の作り方、魚の習性から釣り方までを教えたのはガウディだ。ガウディは夕食に相応しい数の魚を釣り上げることができる。


「ラナ、期待していてね」


 可愛らしい子供の宣言にわたしは「応援してます」と答えた。



次回更新は少し時間がかかります

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― 新着の感想 ―
トゥーリが出てこないと、安心して読める(笑) あの土下座(?)は、一緒に寝たことなのか、風呂に突撃したことなのか。 中身の年齢が外身まで上がったのか、まだ少し手前なのか。 大分落ち着いてきたっぽいけ…
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