表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/37

少年にときめいてはいけない


 アシュレイ様の中身は何歳なんだろうと思いつつ、確認する機会を失ったというか。今はそれよりも命の危険があることもあって、きちんと確かめることなく迷路のようになった洞穴を進んでいく。


 いったいどのくらいの時間が過ぎたのだろう。魔法で作られた淡い灯りだけの世界では想像がつかないけど、お昼はとっくに過ぎているんじゃないだろうか。


 あれからもモグラは現れ続けて、アシュレイ様とサラちゃんは合計十体のモグラを撃退してくれた。

 業火を連発するサラちゃんは、わたしにくっついているだけで魔力を食べることができるらしい。口からじゃないので便利だ。

 なのでサラちゃんが吐く炎の威力は衰え知らず。なんなら増しているほどだ。

 本来のサラマンダーはこうも連発して炎を吐くことはできないのだと、アシュレイ様が教えてくれた。


「サラちゃんはアシュレイ様のおかげで、こんなに可愛いくて頼もしいトカゲさんになっているってことですね」

「私のというよりもラナの影響が強いのだと思う。しかもサラはラナの魔力を気に入っているようだから、使役を解いてもラナを襲わないかもしれない。あとトカゲじゃなくてサラマンダーだよ」


 魔力なんてこれまでは持っているだけでなんの役にもたたなかったのに、アシュレイ様との出会いでそうではなくなった。

 トゥーリがしたことは許せなくても、この出会いや経験は確実にわたしにとって素敵なものになっている。


「それにしてもアシュレイ様は本当に魔物に詳しいんですね」

「……ガウディに教えられたから」


 恥ずかしそうに下を向くけど謙遜しなくてもいいのにな。今はまだ思い出せていないだけで、騎士として仕事をしていたアシュレイ様なら知っているのだろうし。


 十代前半の美少年の姿をしているけど、五歳児のときとは違ってあどけない雰囲気は綺麗さっぱりなくなってしまった。そのかわりに顔つきが凛々しくなって美少年値も急上昇。

 この場所で魔力供給でしか役に立てないわたしは、命を守ってもらうことで、まるで特別な存在のような気分に陥っている。しかもいい大人なのに少年のアシュレイ様にドキドキしてしまって、まるで恋をしているようだった。


 きっと特殊な状況だからだ。

 これが吊り橋効果だとしても相手は少年。子供。中身は……よく分からないけど予想では見た目くらいかな?

 とにかく!

 いい大人が美少年に心を動かしてはいけない。教職にあった者として、特に絶対に何があっても駄目なのだ。


「また魔力をお願いしてもいい?」


 一人葛藤している中、不意に聞かれて「はい」と返事をして膝をつく。

 アシュレイ様も膝をついたら身長差をさほど気にせず口を合わせることができた。


 なんでもないような態度をとっているけど、毎回心臓がバクバクしている。これがあるから中の年齢のことを聞けないのだ。


 だって見た目以上の年齢に中身が戻っていたら。さらには大人の男性に戻っていたらと想像したらとても怖いもの。

 もしそうだとしたらアシュレイ様との行為は、わたしにとってただのお役目じゃなくなってしまいそうで。

 王子様で立派な騎士様としても活躍していたアシュレイ様との未来なんてあるはずがない。絶対に血迷っては駄目だと自分に言い聞かせる。

 

 でももしこのままもとに戻らなければ……。

 そんなあさましい気持ちがほんの少しだけ過ったりもしてしまう。

 もしそんなことになったら辛いのはアシュレイ様だ。わたしなんかを無邪気に慕ってくれた可愛くて素直な、わたしを幸せにしてくれたアシュレイ様。

 そんな彼を苦しめるようなことを考えをしてしまう自分の醜い心が恥ずかしい。


 唇を重ねるとき、アシュレイ様はわたしの頬を両手で包み込む。唾液を舐めるのに舌が入り込んでくちゅりと音を立てる。

 気持ちよくてついアシュレイ様の胸に縋ってしまった。

 吐息が漏れるのはわたしだけじゃない。

 頭がぽぉっとなって幸福感で満たされてしまうのは、なにかの魔法にかかってしまっているのだろうか。


 唇が離れると恥ずかしさから視線を逸らす。取り繕うように「お腹がすきましたね」と意識を別に向けたくて言っただけなのに。声にするとお腹が大きな音を立てたので、今度は別の意味で恥ずかしさがこみ上げた。


「確かに昼を食べ損ねたしね。外は日が沈むころだろうか? 刺客もモグラに食われたか、上に残っている分はガウディが始末している頃合いだろう。そろそろ外に出てみよう」

「地上に通じる穴ってどこにあるんでしょうね」


 迷路のような洞穴を進む間、上から光が差すことなんてなかった。アシュレイ様に腕を引かれるわたしは上を見ながら歩きだす。外が暗いとどこに穴があるか分からないので、朝が来るまでモグラの巣からでることができないかもしれない。


 魔物の巣で徹夜なんて避けたい。夜通し歩き続けて気を張るなんて無理だ。うとうとした隙にモグラに食べられでもしたらと心配するわたしに、アシュレイ様は「恐らくこっちだろう」と道を示した。


「え? わかるんですか?」

「分かるよ。地上に穴が開いた餌場は少し広く作られているからね。遭遇の機会を減らすためにこれまで避けて来たから気をつけて」


 え~っと。

 洞穴を進んだのは刺客から逃げる意味と、その刺客がモグラに襲われるのをみこしてってこと? そしてガウディをまったく心配してないのは、彼の強さをよく分かっているから……だよね?


 見た目十代前半の少年にこれほどの知識が備わっているものなの?

 待って待って待って!

 アシュレイ様、中身が本来の年齢に戻っているなんてことはないですよね?

 いったい今、何歳ほどの御年齢なのですか……とは怖すぎて聞けなくなってしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラナさん、相手の年齢によって「まずい」と感じる方向が変わってくるんやね。 でも相手はそのへん全く気にしてない(笑) せっかく(?)非常事態なので、何も考えない方が吉! いや、非常事態だから現実逃避で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ