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口がいいらしい


 大好きだと言ってもらえて嬉しい。キス……というか魔力の受け渡しをしながら、アシュレイ様の中身はいったい何歳くらいかなと考えた。


 ガウディはある程度のことを教えていたみたいだし、戦い方とか魔法の使い方は無意識でも覚えているようなことを言っていた。

 だから「割と」と言うのがどの程度なのか聞かなきゃ分からないけど、わたしを守ってくれたりや言動からすると、見た目相応かなと推察する。


 となると十代前半か。

 え? 十代前半!?

 異性に対して興味を持ち始める年頃であると同時に、異性を意識して距離をとったりする多感な時期でもある。

 そんなお年頃のアシュレイ様とこんなことをしていると気づいてしまい、はっとして距離をとるために突っぱねようとした。


 わたしが血を流すことを気にしてくれた優しいアシュレイ様。だからってアシュレイ様がこんなことまでする必要なんてない。

 だからこの状況に気づいて止めようとしたのに、離れようとしたら抱き込むように背中に腕を回されて、もう一つの腕はわたしの後頭部へと回ってぎゅっと抱きしめられた。


 屈んでいたこともあってバランスを壊して倒れ込む。背中が冷たく湿った地面に押し付けられてアシュレイ様が馬乗りになった。その間も唇は離れなくて、口内を貪られる。


 静かな洞穴に唾液が混じり合う音がいやらしく反響していた。不謹慎にも気持ちよさを感じてしまい恥ずかしい声が漏れる。

 これは駄目、犯罪だ。わたしはいいけどアシュレイ様が傷つく。


 天使の心を守りたくてアシュレイ様を叩いたら、腕を取られて縫い止めるように地面に押し付けられた。

 魔力を吸い取り始めると止められなくなってしまうのかな? 執拗に舌を絡めて口内を犯され続けた。


 駄目ムリもう保たない。

 ずっとくっついているから息ができなくて酸欠状態のわたしは意識を失いかける。

 そこでようやく我を取り戻したようで、伸し掛かかっていたアシュレイ様が勢いよく離れてくれた。


 はぁはぁと大きく息をしながら目を開ける。アシュレイ様は腕で口元を押さえてびっくりしたような顔をしていた。


「ごめ……ラナ。私はっ……」


 薄暗い洞穴の中でもはっきりと分かるくらいにアシュレイ様は真っ赤になって焦っていた。きっとわたしも真っ赤だろう。体が熱くてむずむずする。

 でもそんなアシュレイ様の様子でわたしは冷静さを取り戻した。


「魔力、十分に取れましたか?」

「あ、ああ。十分だ。私はもともと魔力の器が小さくて、なのにラナの魔力は馴染みがよくて……いや、こんなの言い訳だな。その……すまない」


 地面に仰向けになっていたわたしはアシュレイ様に腕を引かれて起こされる。二人して座り込んで膝を突き合わせた。


「謝らなくても大丈夫ですよ。よく分かりませんけど、アシュレイ様にとって良いことならわたしはなんでもしますから」

「なんでもなんて言ってはいけない」


 項垂れるアシュレイ様は分かりやすく落ち込んでいた。ズルズルと頭が下がって額が地面にくっつく。


「すまない、本当に。私はなんてことを……」


 ものすごく落ち込んでいた。これはきっと、自分が何をしたのか理解して反省しているのだ。

 美少年かつ可愛いアシュレイ様が苦しんでいる様子に胸を打たれる。

 ちょっと……いやかなりびっくりしたけど全然平気。それよりも相手がわたしだなんてアシュレイ様の方が被害者だ。


「気にしないでください。それよりもどうですか? 心の成長は進んでいますか?」


 一人称が「ボク」から「私」に変わったので、恐らくだけど今ので一気に成長したと思う。だけど見た目はそのままだから実際にどうなのかはアシュレイ様に聞かないと分からない。


「ごめ……ごめんラナ。私は駄目だ」


 アシュレイ様が顔をあげると、青い瞳から大粒の涙がぼろぼろと零れ落ちていた。


「ア、アシュレイ様、いったいどうしました!? どこか痛みますか!?」

「どうか私を知っても嫌わないでほしい」

「嫌うなんてありません。あるわけないですよ。わたしはアシュレイ様が大好きですから!」


 だから泣かないで。いったいどうしちゃったのかな。急な心の成長に気持ちが追いつかないのかもしれない。

 わたしはアシュレイ様を抱きしめて、よしよしと背中と頭をなでた。


「ラナ、私は本当に君が大好きなんだ。嫌われたら生きていけない」


 アシュレイ様に抱きしめ返された。彼はわたしの肩に顔を埋めてぐずぐず涙を流し続ける。


「ごめん」と謝罪してばかりのアシュレイ様。きっと彼の中で何かしらの葛藤があるのだろう。


「いいですよ、ゆっくりで。体も心もゆっくり大きくなりましょうね」


 どう対応したらいいのか分からなくて頭をなでなでし続けてあげる。


 するとしばらくして落ち着いたアシュレイ様から「また魔力を貰ってもいい?」と次回のことを聞かれてしまう。ここでアシュレイ様の魔力保持は死活問題だから「もちろんです」以外には答えようがない。でも次も泣かれたら辛いな。


「血でもいいですからね」

「いや、口からもらう」


 気遣ったつもりが即答された。

 血だとどのくらい必要なのか分からないけど、今回受けた心のダメージを考えたら肌を切るくらい容易いのにな。


 それにしてもアシュレイ様の魔力の器ってどのくらいなのだろう。実戦だと補給はどうしてるのかな。もしかしてトゥーリとキスして……なんて考えるともやもやしてしまった。


 今回頻繁に魔力供給が必要なのは、少年の姿を保つためだなんてつゆ知らず。トゥーリとアシュレイ様の魔力受け渡しを想像してしまったわたしは、もやもやした気持ちがなかなか取れなくて困ってしまった。


 




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― 新着の感想 ―
(笑) 本能だった(笑) 土下座再び。
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