第270話:虹色の翼に見送られて
黒鮫飛行船団の捕縛から数日後。聖域ドラゴニアの樹上広場では、盛大な勝利と平穏の祝宴が繰り広げられていた。
竜王自らがユウの手を強く握り締め、深く頭を下げた。
「旅人ユウよ、そして勇敢なる仲間たちよ。聖域を救い、古き愛し子を守り抜いてくれたこと、竜の理に刻み永久に感謝しよう」
「いいえ、俺たちもぽんたと出会えて、たくさんの元気を貰いました」
宴が終わりを告げ、出航の時。
ぽんたはすっかり成長し、小さな翼を力強く羽ばたかせながら、ユウの胸元に顔を埋めてきた。
「きゅ……きゅ〜う……っ!」
「ぽんた、元気でな。離乳食のレシピとプリンの作り方はレニちゃんに渡しておいたから、いっぱい食べて大きくなるんだぞ」
ユウが頭を撫でると、ぽんたは自分の胸元から剥がれたばかりの一枚の『虹色の輝鱗』を外し、ユウの手のひらにそっと手渡した。
「これは……?」
「古の虹竜の鱗よ」とレニが微笑む。「いつかぽんたが大きくなった時、どこにいてもユウたちの場所がわかる絆の証なんです」
「ありがとう、ぽんた。大事にするよ」
キャンピングカーがゆっくりと浮上を開始すると、ドラゴニアの無数の竜たちが一斉に大空へ飛び立った。
赤、青、金、緑——色とりどりの巨翼が、キャンピングカーを囲むように隊列を組み、雲海の上をどこまでも護衛するように並走する。
「すごい……! 空が虹色の翼で埋め尽くされていくわ!」
ルナが天窓から手を振り、セリスが温かな眼差しで遠ざかる聖域を見つめる。
やがて、夕陽が雲海を黄金色に染め上げる中、竜たちは名残惜しそうに咆哮を上げて反転し、ドラゴニアへと戻っていった。
『マスター。雲海エリアの突破を完了。前方に広大な大陸影を検知しました』
ナビの声に応え、ユウがフロントガラスの向こうを見据える。
夕空の水平線の彼方。雲海が途切れたその先には、見たこともないほど広大で神秘的な『新世界の大陸』が、雄大に広がっていた。
「さあ、みんな。新しい世界へ出発だ」
キャンピングカーは夕陽の光を身に纏い、新たなる冒険の空へと静かに翼を広げて滑空していくのだった。




