第269話:咆哮と浄化の光
「ひいぃっ!? くるな! 来るなぁぁぁっ!」
二隻の同伴船を失い、完全に退路を断たれた黒鮫飛行船団の旗艦。その甲板で、頭領の男が狂ったように叫んだ。
「ええい! こうなったら、あの樹上の国ごと毒気で全滅させてやる! 喰らいやがれ!」
旗艦の前面がガコンと開き、どす黒い毒ガスを充填させた巨大な『腐蝕毒霧砲』が姿を現した。怪しい黒紫色の煙が猛烈な勢いで吹き出し、聖域ドラゴニアの巨木へと向かって広がり始める。
「なっ……なんて卑劣な奴らなの!」
ルナが歯噛みし、セリスが結界を広げようとしたその時——。
「ウォンッ!」
キャンピングカーのルーフテラスへ、一匹の白い仔犬——ポチが勢いよく飛び乗った。
ポチの全身が、まばゆい銀色の神光に包まれる。
一瞬のうちに、その姿は仔犬から、天空を統べる伝説の神獣『銀狼』の凛々しく神々しい巨躯へと変貌を遂げた。
「ガアアァァァァァァンッ!!!!」
大気を、そして雲海そのものを激震させる、神聖なる神獣の咆哮!
強烈な衝撃波が風神の嵐となって吹き荒れ、迫り来ていた黒い毒霧を跡形もなく吹き飛ばし、逆になぎ払われた旗艦の甲板を激しく打ち据えた。
『ひぎゃああああっ!? 毒が……毒が逆流してきたあぁぁぁっ!』
「よし! ポチ、ナイスだ! 主砲【星屑の浄化砲】、ターゲットロック……発射ぁぁぁ!」
ユウの叫びと共に、キャンピングカーの天窓レンズから解き放たれた純白の収束極光が、旗艦の巨大な推進機関室を一直線に撃ち抜いた!
——ドガァァァァンッ!
黒煙を上げて動力を完全に失った旗艦は、そのまま低空へとゆっくり降下。そこへ追いついた竜王率いる竜戦士たちが一斉に飛びかかり、逃げ惑う密猟団員たちを完膚なきまでに捕縛したのだった。
「や……やったぁぁぁ! 密猟団をやっつけたぞー!」
レニが飛び跳ねて歓声を上げ、神獣から再び可愛らしい仔犬の姿に戻ったポチが「わんっ♪」と胸を張るのだった。




