第266話:竜たちの肉祭り
ぽんたとレニの案内で、キャンピングカーの周りにはぞろぞろと大きな影が集まっていた。
身の丈三メートルを超える竜人族の巨漢戦士たちや、翼を折りたたんだ巨竜たち。レニの父親である竜王の側近たちだ。最初は「人間が作った怪しげな鉄の城など……」と、腕を組んで警戒の視線を注いでいた。
「よし、大人たちにはこれだな」
ユウはキャンピングカーの車上スカイデッキに大型鉄板グリドルを展開した。
ネットスーパーから大量に取り寄せたのは、牛と豚の絶妙な黄金比合い挽き肉。飴色になるまで炒めた玉ねぎと卵、パン粉を練り込み、ひとつが人間の顔ほどもある巨大な肉塊へと成形する。
ジュゥゥゥゥゥッ……!
熱した鉄板に肉塊を並べた瞬間、猛烈な肉汁の爆ぜる音と香ばしい煙が広場いっぱいに広がった。
両面をこんがりと焼き上げ、仕上げに赤ワイン、バター、醤油、トマトペーストを煮詰めた特製デミグラスソースをたっぷりと回しかける。
ジュワァァァッ! という激しい蒸気と共に、胃袋を直接掴むような濃厚で香ばしい肉の香りが風に乗って竜たちの鼻腔を直撃した。
「ぬ……っ!? こ、この香ばしい匂いは一体……!?」
「ゴクリ……肉の……肉の焼ける匂いだ……!」
腕組みしていた竜戦士たちの喉が、同時に鳴った。
「竜人族の皆さん、焼きたての特製メガハンバーグです! どうぞ!」
ユウが焼き上がった熱々のハンバーグを大皿に乗せて手渡すと、先頭の巨漢戦士が我慢できずに手で掴み、豪快に口の中へ放り込んだ。
——ズドォンッ!
「んんんんんんまぁぁぁぁぁいっ!!!???」
咆哮のような大歓声が天空の広場に響き渡った。
噛みしめた瞬間に、溢れ出すすつあつあでジューシーな肉汁の洪水。そして、肉の旨みを極限まで引き立てる甘辛くコク深いデミグラスソース。生肉しか食べてこなかった彼らにとって、それは概念を覆すような美味の衝撃だった。
「うおおおっ! 俺にもくれ!」「我にもだ!」「この肉の塊は悪魔的な美味さだ!」
一瞬にして、警戒していた竜戦士たちがハンバーグを求めて大行列!
こうして、聖域ドラゴニアの広場は、笑顔と歓声が溢れる大「肉祭り」へと変貌を遂げたのだった。




