第263話:移動するキッズルーム
「きゅ〜う♪ きゅ〜う♪」
ユウの腕の中で、ぽんたはすっかり上機嫌だった。小さな翼をパタパタさせながら、好奇心いっぱいにキャンピングカーの車内を見回している。
『マスター。同行者「ぽんた(種別:古代虹竜・幼生体)」の登録を完了しました。幼生体の安全確保および育成のため、車両後部エリアの最適化モジュールを実行します』
ナビのアナウンスと共に、車内後部のパーテーションが滑らかにスライドし、壁面がぐぐっと外側へと押し広がった。
ガコン、と軽快なシステム音が鳴り響くと、そこには驚くべき空間が出現していた。
「……すごっ!? これ、車の中なの!?」
レニが驚きで目を丸くする。
広がっていたのは、床から壁に至るまで怪我防止の最高級フワフワ・ウレタン素材で覆われた、夢のようなキッズルームだった。
中央にはカラフルなプラスチックボールが数千個も敷き詰められたボールプール、壁際組み込みの小さな木製滑り台、そしてぽんたがすっぽり収まる雲のようなフカフカのベビーベッドまで備え付けられている。
『形態名称:【キッズファミリールーム&プレイルームモード】。衝撃吸収率99.9%。幼生体がどれほど暴れても怪我をしない安全設計です』
「きゅ〜うっ!!」
ぽんたの目がキラキラと輝いた。ユウの腕からピョコンと飛び降りると、短い足でタタタッと走り、そのままボールプールの中へ『ダイブ!』した。
バシャァァン! とボールが弾け飛び、埋もれたぽんたが「きゅぷっ!?」と顔を出す。
「あはは! 楽しそう!」
ルナやレニも一緒になってボールプールに飛び込み、ぽんたと一緒にボールを投げ合って遊び始めた。ポチも楽しそうに「わんわん!」と尻尾を振りながらボールを追いかけている。
だが、しばらくはしゃいで遊んでいたぽんたが、急に動きを止めた。
ぐぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜っ。
車内全体に響き渡るような、情けないほど大きな腹の音が鳴り響く。
「きゅ……きゅ〜ん……」
ぽんたは力なくへたり込み、涙目になってお腹をさすりながら、すがるようにユウを見上げて泣き出したのだった。




