第262話:卵から生まれた愛し子
「ここは、私たち竜人族の聖域……『ドラゴニア』です」
助け出された竜の少女レニに案内された先は、雲海の中に聳え立つ一本の超巨大樹だった。世界樹にも匹敵する巨木の枝々には、古代の神秘的な神殿が立ち並んでいる。
キャンピングカーが巨大な枝の台座に着陸すると、レニはユウたちを神殿の最奥にある『神聖なる孵化場』へと招き入れた。
温かな光が差し込む大理石の部屋の中央。そこに置かれていたのは、人の背丈ほどもある虹色に光り輝く一つの大卵だった。
「この卵は、何百年も前から静かに眠り続けている古の『虹竜』の卵なんです。でも、今日になって急に光り始めて……」
レニが言いかけたその時——パキッ、と乾いた高い音が部屋中に響き渡った。
「あっ……! 割れる!」
ルナが声を上げる。虹色の卵の表面に、幾重もの細かな亀裂が走り始めた。
パキパキ、パリン!
音を立てて殻が弾け飛び、中から転がり出てきたのは、手のひらに乗りそうなほど小さな、真ん丸な体型のちびドラゴンだった。全身を包むうっすらとした虹色の鱗、つぶらな黄金色の瞳、そして小さなパタパタ揺れる翼。
「きゅ〜う……?」
誕生したばかりのちびドラゴンは、ゆっくりと周囲を見回した。
セリスもルナも息を殺して見守る中、ちびドラゴンは短い脚でトコトコと歩みを進め——真っ直ぐにユウの足元へ近づいてきた。
「きゅ〜うっ♪」
愛らしい声を上げると、ちびドラゴンはそのままユウの足にしがみつき、嬉しそうにすりすりと頭を擦り寄せてきたのだ。
「え……俺……!?」
「まあっ! 完全にお父さんだと思われていますわ、ユウ様!」
セリスがくすりと微笑み、ルナも「可愛い〜!」と目をハートにして身を乗り出す。ユウがそっと持ち上げると、ちびドラゴンは腕の中で満足そうに「くぅ〜」と喉を鳴らした。
「気に入られたみたいだな。……よろしくな、ぽんた」
丸っこい体型からユウがそう名付けると、ぽんたは「きゅ〜うっ♪」と弾けるような笑顔で羽をパタパタと羽ばたかせるのだった。




