第260話:星降る夜のパーティー
翌夜、スタラグランドの大観測塔前の広場は、これまでにない熱気に包まれていた。
「はい、お待たせしました! 星空パフェ追加入ります!」
「こちら、濃厚ホットチョコレートのお客様です!」
キャンピングカーのサイドタープが大きく広げられ、一夜限りの『星空青空カフェ』が開店していた。
都市の危機を救った旅人たちの料理を一目食べようと、観測士や住民たちが大行列を作っている。
「う、旨い……! なんという濃厚なココアの味わいだ……! 凍えた身体に染み渡る……!」
「このパフェ、青と紫のゼリーがまるで夜空そのものじゃないか! 口の中で星が踊ってるよ!」
あちこちから上がる絶賛の声に、ユウとルナ、ツムギが忙しく手を動かす。
その賑やかな人込みの中から、すっかり明るい表情を取り戻したアナが、ユウのもとへ歩み寄ってきた。
「ユウ……これ、持っていって」
アナが照れくさそうに手渡したのは、スタラグランドの最高級水晶で削り出された、小さなレンズだった。
「観測塔の予備レンズだけど……キャンピングカーのプラネタリウムに取り付ければ、もっと遠くの星まで綺麗に見えるはずだから。助けてくれた、お礼よ」
「ありがとう、アナちゃん。大切に使わせてもらうよ」
ユウがレンズを受け取り微笑むと、アナは少し頬を染めて、胸を張った。
「私ね、これからは一人で抱え込まずに、都市のみんなと一緒に星を見ることにしたの。素直になるって……案外悪くないわね」
「ふふ、素敵な心がけです、アナちゃん」
セリスが優しく微笑みかける。
やがて、賑やかな祝宴が夜深くに終わりを告げ、人々の温かい見送りの声の中、キャンピングカーは再びゆっくりと浮上を開始した。
『マスター。スタラグランドの領空を離脱。蒼穹の巡航ルートへ復帰します』
ナビの報告とともに、車体は反重力で滑るように雲海の上を滑空していく。
天窓を見上げれば、アナからもらったレンズの効果か、夜空の星々は以前にも増して眩い光を放っていた。
「綺麗だな……」
「ええ、本当に……。次の旅では、どんな景色に出会えるのかしらね」
セリスがユウの隣に寄り添い、共に星空を見つめる。
雲海の遥か彼方、漆黒の夜の向こう側には、まだ見ぬ未知の大陸の影が静かに横たわっていた。




