第255話:星空を食べるパフェ
「うそ……何よこれ、車の中なのに……空の上にいるみたい」
キャンピングカーの扉を潜り、車内に足を踏み入れたアナは、息をのんだまま立ち尽くした。
足元からはポカポカとした心地よい温もりが伝わり、見上げれば天窓から全方位へ広がる満天の星々。『プラネタリウム&星空テラスモード』の幻想的な空間が、寒さで張り詰めていた彼女の心を優しく解きほぐしていく。
「さあ、アナちゃん。こっちに座って」
ルナに促され、ふかふかのシートに腰掛けたアナの前に、ユウがガラスのパフェグラスを静かに置いた。
「——うわぁ……!」
アナの口から、感嘆の声が漏れた。
グラスの中に広がっていたのは、まさに『食べる夜空』だった。
底には深い紫色のブルーベリーとラズベリーのソース。その上に積み重ねられているのは、ハーブティーで染め上げた澄んだ青と紫の美しいグラデーションゼリーだ。滑らかなバニラアイスの上には、銀色に輝くアラザンと、星の形をした自家製サブレが可愛らしく添えられている。
「星空グラデーションパフェだよ。召し上がれ」
「こんなにきれいな食べ物……食べるのが勿体ないくらいだわ……」
アナは長めのスプーンを握り、おそるおそるパフェの層をすくい、口へと運んだ。
ひんやりとした青いゼリーが口の中でつるりと解け、甘酸っぱいベリーの風味と濃厚なバニラアイスが混ざり合う。アラザンのカリッとした歯ごたえが、まるで口の中で星が弾けたかのような心地よいアクセントを生み出していた。
「……すごく美味しい。甘くて、酸っぱくて……まるで星屑を食べてるみたい」
すっかりツンデレの刺を失い、アナは夢中でスプーンを動かした。美味しさに瞳を潤ませながらパフェを完食した彼女は、満足そうにふぅと温かい息を吐いた。
「ねえ、アナ。本当のところ、あの高い塔で何を一人で観測していたの?」
ユウが静かに尋ねると、アナの表情がすっと真剣なものへと変わった。彼女はスプーンを置き、天窓の星空を見上げた。
「……都市の大人たちは、まだ誰も気づいていないの。でも、私の観測データは間違っていないわ」
アナの瞳に、焦りと決意の光が宿る。
「あと数日で、闇の魔力を帯びた『黒蝕の彗星片』がこのスタラグランドに最接近する。このままだと、都市の動力である星魔力がすべて吸い尽くされ、星空もろとも、この都市は雲海へ墜落してしまうの……!」




