第245話:空の上の甘味タイム
スチームプレートの蓋を開けると、厚さ5センチ以上にふっくらと膨らんだ黄金色の『極上スフレパンケーキ』が姿を現した。
フォークを軽く添えるだけで、ぷるんぷるんと可愛らしく揺れる驚異的なエアリー感。
ツムギはそこに、ネットスーパーの濃厚な北海道産ホイップクリームをたっぷり乗せ、カナダ産の純粋メープルシロップと透明感のある溶かしバターをトロリとかけ回した。
「よし、ウッドデッキ解放!」
僕がボタンを押すと、キャンピングカーの側面がゆっくり開き、お洒落な木製カウンターが登場する。
ルナが待ちきれずに、スフレパンケーキをナイフで切り分けた。
シュワッ……。
ナイフを入れた瞬間、泡が優しく消えるような繊細で甘い音が車内に軽やかに響く。
口に運んだルナが、目を丸くして大喜びで歓声を上げた。
「んんん〜〜〜っ! 口に入れた瞬間にシュワ〜って溶けてなくなっちゃう! 甘くてフワフワで、天国にいるみたいだよー!」
「ララも食べるー! あむっ……フワフワ〜! お空の雲を食べてるみたい!」
二人が幸せそうに口いっぱいに頬張る光景と匂いに、車外のドラグたちの理性が完全に限界を迎えた。
「く……屈せん……武人がこのような軟弱な食べ物に屈せんぞぉ……っ!」
汗だくで震えるドラグの前に、セリスが優しく微笑みながら、お皿に乗った熱々のスフレパンケーキを差し出す。
「警備のお仕事、ご苦労様です。冷めないうちにどうぞ召し上がってください」
「なっ……武人を毒殺する気か!?」
「ふふ、毒など入っていませんよ。一口召し上がれば分かります」
セリスの清らかな聖女の笑顔に毒気を抜かれ、ドラグはおそるおそるフォークで一口……。
シュワッ。
「……っ!!???」
ドラグの巨体がビクッと跳ね上がった。
口の中でシュワリと溶けて消える、信じられないほどの軽やかさと卵の優しさ。そしてメープルシロップとホイップクリームの暴力的なまでの幸福感。
「な、何だこれは……っ! 噛む必要すらなく、口の中で溶けて甘みが広がる……っ! 武人の心が……心が溶けていく……っ! おい、お前たちも食え! この奇跡の味を食すのだ!」
ドラグの言葉に、部下の竜騎士たちも一斉にスフレパンケーキにかぶりつき、「美味すぎるーーーっ!」と大歓声を上げた。
無骨な竜騎士隊長ドラグたちは、目頭を熱くして涙を流しながら、至高の甘味の前に完全落城したのだった。




