第244話:極上スフレパンケーキの魔法
「ふふ、無骨な竜の騎士様方ですね。今回は『木もれ陽の雫』を使ったとっておきのスイーツで仕掛けましょう!」
ツムギが楽しそうに袖をキュッと捲り上げ、新鮮な卵の黄身と白身を手際よく別々のボウルへ分け始めた。
ネットスーパーで手に入れた最高級新鮮卵、北海道産の濃厚な無調整牛乳、そして厳選された特選小麦粉。
ツムギは白身をボウルに入れ、泡立て器で素早く手応えよく攪拌して、滑らかでツヤのある真っ白な極上メレンゲを作り上げていく。
「そして、ここに……世界樹からいただいた『木もれ陽の雫』を二滴、加えます!」
数滴のエッセンスが落ちた瞬間、白かったメレンゲが黄金色の淡く神秘的な光を放ち、まるで空に浮かぶ積乱雲のようにフワッフワな質感へと劇的に変貌した。
「すごい……生地がまるで空に浮かぶ本物の雲のようにツヤツヤで柔らかそうです!」
セリスが思わず手を合わせて感嘆の声を漏らす。
ナビが最新スチームホットプレートの温度をコンマ1秒単位で160度に寸分違わずキープし、ツムギが生地を厚みをもたせてぽってりと乗せた。少量の水を差して蓋をし、じっくりとスチーム蒸し焼きにしていく。
数分後、ログハウス風車体の上部に設置された強力な換気ダクトから、車外へ向かって強烈で甘く芳醇な香りの風が噴出された。
焼き上がる香ばしい卵とバニラの甘い香り。
そして『木もれ陽の雫』がもたらす、清らかでどこか爽やかで切ない幻想的な芳香。
「ぬ……っ!? な、何だこの匂いは……っ!?」
車外で殺気立って重厚な飛竜槍を構えていたドラグが、思わず槍を下げて鼻をぴくぴくひくつかせた。
隊員たちの飛竜も鼻をくんくんと鳴らし、警戒をすっかり忘れてキャンピングカーを見つめる。
生涯において激しい戦いと硬い干し肉、強い酒しか知らなかった無骨な竜騎士たちにとって、このエアリーで甘く優しさに満ちた香りは、脳の戦闘本能を強制遮断する未知の衝撃だった。
グゥゥゥゥ……ッ!
ドラグの巨体から、雷のような大音量の腹の音が空に響き渡った。
「た、隊長……? 今、凄まじい腹の音が……」
「黙れ! 惑わされるな! これは敵の卑劣な精神攻撃……くぅぅ(グゥ〜)」
ポチもホタルも、ダクトから漏れ出る甘い香りに誘われて鼻をクンクンと鳴らしている。
ドラグは顔を真っ赤にして腹を押さえ、喉を鳴らして甘い生唾をゴクリと飲み込むのだった。




