第243話:竜の騎士と槍の威嚇
白亜の港へ静かに着陸したキャンピングカー。
だが、僕たちが車外へ足を踏み出そうとしたその時、上空からバサバサという凄まじい風圧を伴う巨大な羽ばたき音が空に重く響き渡った。
「警告! 上方より大型の飛行魔獣が多数、急速接近中!」
ナビの切迫したアナウンスと同時に、巨大な飛竜に跨がった数人の騎兵たちが頭上から翼をたたんで舞い降りてきた。
褐色に焼けた皮膚、頭部から威厳を持って生える一本の赤い角、そして肌に硬く刻まれた頑強な竜の鱗。武骨で圧倒的な存在感を放つ彼らこそが、天空都市を守護する竜人族の騎士たちだった。
その先頭に立つ、ひと際ガッシリとした大男が、七色に光る重厚な飛竜槍をキャンピングカーへとまっすぐ突きつけて怒号を上げる。
「動くな不審船! 雲海を越えて天空都市アエログラドへ立ち入る不躾な者どもよ! 竜騎士隊長ドラグが命じる、直ちにその奇妙な船から出て降伏せよ!」
ドラグの威厳ある宣言とともに、飛竜たちがガァァッ! と激しい咆哮を上げ、巨大な鼻孔から赤い炎と黒い爆煙を威嚇するように吹き出した。
「ひぇ……今度は巨大な竜に乗ったお兄さんたちが来たよ! すっごく強そうで怖いよ!」
ルナが驚いて身を縮め、腰の短剣の柄に手をかける。ポチも足元で唸り声を上げた。
「竜人族は武を尊び、誇り高いが故に異分子への警戒が人一倍強くての。いきなり空飛ぶ未知の車で乗り込まれては、不審船と驚くのも無理はないじゃろ」
ソフィアが呆れたように腕を組み、ダボダボのローブの裾を揺らした。
「マスター、相手の主武器は飛竜槍および竜の息吹です。しかし当車両のオリハルコン装甲およびハニカムシールドには一切のダメージを与えることは不可能です」
「ナビ、分かってるって。力でねじ伏せる気はないよ」
ドラグたちは殺気立ち、いまにも槍を投げ放ってきてもおかしくない緊張感だ。だが、ここで戦闘になれば友好的な関係は二度と築けない。
「セリス、ツムギ。ここは一度車内に戻って、彼らの警戒を解く平和な『おもてなし』の準備をしよう」
「はい! ユウさん、美味しい料理で彼らの堅い心を優しく解しましょう!」
「異世界どこでも、食は文化を繋ぐ最高の架け橋ですからね」
僕はドアをしっかり施錠し、ウッドブラインドを下ろすと、落ち着いて車内のシステムキッチンへ向かうのだった。




