第242話:雲の上の天空都市
「マスター、前方に巨大な浮遊質量および未知の古代建造物反応を検出しました」
ナビの静かなアナウンスを受け、僕はフロントガラスの向こうに広がる青澄んだ空へ視線を走らせた。
白く立ち込める綿飴のような分厚い雲海を掻き分け、オリハルコン補強された反重力翼が優雅に風を切る。その先で立ち込める雲がさっと晴れた瞬間、信じられないほどの巨大な物体が突如として目の前に姿を現した。
「すごい……! あれ、浮いてるの!? 空の中に大きな街があるよ!」
ルナが助手席から身を乗り出し、窓ガラスにペタリと顔を押し付けて大声で叫ぶ。
雲海の上にぽっかりと浮かび上がっていたのは、白亜の美しい石造りの建造物が建ち並ぶ巨大な浮遊島――伝説の天空都市『アエログラド』だった。
島全体が神々しい淡いエメラルドグリーンの魔力結界に包まれ、都市の周囲には見たこともない綺麗な羽を持つ魚(天空魚)たちが、まるで清らかな水の中を泳ぐかのように空中を優雅に舞っていた。
「わぁ……本当に夢のように綺麗なお街です……! 空の上に、あんなに素敵なお城や石造りの街並みがあるなんて……!」
セリスが胸の前で両手をギュッと組み、うっとりと感銘を受けたように温かな吐息を漏らす。
「ふむ、あれこそが竜人族と翼人族が古くから住まう天空都市アエログラドじゃ。地上の文明とは完全に隔絶されておるが、あ奴らもまた独自の武と誇り高き文化を持っておるのじゃ」
ソフィアが肘掛けに深く身を預けながら説明を加えた。
僕がコンソールのボタンを押すと、キャンピングカーの屋上にある『スカイデッキ』が音を立ててスライドし、開放された。
「みんな、外に出てみよう!」
車外デッキへ躍り出ると、地上では決して味わえない冷涼でどこまでも澄み切った空気が肌を心地よく撫でた。
「風がとっても気持ちいいよー! 雲が手で触れそう! ふわふわだー!」
ララがデッキの手すりから乗り出し、無邪気に手を伸ばす。ポチも風に耳をなびかせながら「ワンワンッ!」と嬉しそうに尾を振った。
オリハルコンフレームの反重力翼が黄金色の光を放ちながら優雅に羽ばたき、キャンピングカーは天空都市の白亜の港へと滑るように高度を下げていった。
「よし、港に着陸するぞ。どんな新しい出会いがあるか楽しみだな」
白亜の港の綺麗な石畳へと静かに車体を接地させ、僕たちは新しい冒険の舞台へと足を踏み入れるのだった。




